飲食店や商店などレジを扱う業種はたくさんありますが、レジのお金がいつもぴったり合うとは限りません。そんなときに、レジを預かっているのは担当者なのだから、現金のズレは担当者がすべて責任を持つという会社があったりします。中には、お金が多いときは会社がもらい、お金が足りないときはレジ担当者が自腹を切って穴埋めをしなければいけない会社もあるようです。今回はそんな「慣行」が問題になったケースを見てみます。
社員「社長、本日の売り上げですが、レジの現金が3万円ほど合いません。何度も見直しや計算もし直してみたのですが、原因がわかりません」
社長「それは困るよ。レジは君が預かっていたのだから当然君の責任だ。ちゃんと穴埋めしておいてくれよ」
社員「そうはいっても、この金額ですから持ち合わせもありませんし、そもそも生活ができません」
社長「それじゃ、次の給与から天引きしておくから、いいな」
いかがでしょうか。普通は小銭が合わない程度だったのかもしれませんが、ある程度まとまった金額の不足が出てしまうと話は別です。会社が社員に実際に発生した損害額の賠償を求めることまで禁止されているわけではありませんが、そもそもレジの現金が合わないことは日常的に発生する可能性があるので、そのリスクを社員だけに押しつけて、会社がすべてのリターンを取ることは問題があるとも考えられます。
また、今回のように、給与から天引きを行うことは原則、禁止されています(労働基準法24条1項)。例外として労働者の過半数で組織する労働組合や、それがないときは労働者の過半数を代表する者との書面による協定がある場合は賃金の一部を控除して支払っても労働基準法違反に問われることはありませんが、労働契約上も適法となるためには就業規則にも根拠規程を設けるか、労働者との個別の同意を得る必要があります。
今回のケースは、こうした手続が全く取られていませんので、給料からレジの現金の不足分3万円を控除することはできないことになります。
中小企業では、簡単に給与から天引きが行われていたりもしますが、実際には違法な控除であることが多く注意が必要です。しかも、給料から控除された社員の方は、思い当たる節があればまだしも、理由も全くわからずに損害額を控除されてしまえば腹が立ちますし、やる気もなくなってしまいます。周りの社員に会社の文句をいうかもしれませんし、結果的に会社にとっても3万円より大きな損害になってしまうことがあります。
そうならないためにも、みんなが納得できるルールを定期的に話し合って決定していく必要があります。ちなみに、3万円は釣り銭用の手提げ金庫から出てきたそうです。
若くてフットワークが良いスタッフを中心にお客様のサポートを行っています。 新しいことにどんどんチャレンジするスタッフが多く「それはできません」という仕事が少ないのが当社の特徴です。
弁護士や会計士、税理士、司法書士、社労士、中小企業診断士、行政書士、ファイナンシャルプランナーと社内にほとんどの専門家が常駐していることから、本当に必要なサービスを一ヶ所で受けることができる便利さが喜ばれています。