保険でどこまで弁償できる?(対人賠償篇)
これまで何度か取り上げてきた「賠償責任保険」。
今の世の中、「ごめんなさい」では済まない場面が往々にしてありますから、
極めて優先度の高い保険として、ご紹介してきたかと思います。
ついうっかりやってしまったことで、
他人にケガをさせたり(対人賠償)、
他人のものを壊してしまった場合(対物賠償)、
法律上の責任として弁償をしなければなりません。
これが「賠償責任」です。
「賠償責任」は金銭によって、
その責任を果たすことになるので、
「賠償責任保険」という保険がこの金銭支出を補償するわけです。
ただ、やっかいなことに、
法律上弁償しなければならないとされたこと
(賠償責任があるとされたこと)が全て、
賠償責任保険の対象となるわけではありません。
賠償責任保険も「保険」であるため、
「約款」というルールが最も優先され、
「約款」で対象外と定められていれば、
法律上の責任が問われる場合あっても、
保険から金銭を回収することはできません。
では、賠償責任保険の対象となる「対人賠償」や「対物賠償」の
範囲とはどこまでになるのでしょうか。
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まずは「対人賠償」から考えていきたいと思います。
「他人にケガをさせる」と対人賠償(責任)が発生します。
よそ見をして歩いていたら、
前にいた人に気付かずにぶつかってしまい、
その結果前にいた人が転んで、
地面についた腕を骨折してしまいました。
こういったケースは、
紛れもなく「他人にケガをさせて」いますので
賠償責任保険の対象となる可能性が高いです。
では、こんなケースはどうでしょうか。
周囲を確認せずバットの素振りをしたところ、
実は近くに人がいました。
バットはその人の顔を、
幸いにもかすめただけで当たりはしなかったのですが、
相手の人はショックでその場にへたりこんでしまいました。
幸い、へたりこんだ際も身体のどこかを打ちつけたりはせず、
「肉体的」なケガはなかったものの、
精神的に参ってしまい入院することに・・・。
この場合、賠償責任保険の対象となるかどうかは、
ケースバイケースと言わざるを得ません。
賠償責任保険が対象とする「対人賠償」の範囲は、
「肉体的な機能障害」に限定されず、
「精神上の機能に異常を来した場合」も含まれます。
しかし、「精神上の機能障害」の場合、
起きた事故との相当因果関係がかなり慎重に問われる事となります。
また、ここで言う「精神上の機能障害」には、
単なるショックや名誉毀損などは含まれず、
「不眠」症状も含まれないとされるようです。
例えばエレベーターに数時間人が閉じ込められた結果、
「恐怖のあまり精神異常を来した」場合は、
保険の対象になる可能性が高く、
エレベーターに閉じ込められたために感じた「恐怖に対する損害賠償」は
保険の対象にならない可能性が高いと言えます。
騒音を原因とする場合も、
騒音が原因で体調不良や精神障害になったと医学的に認められれば、
保険の対象になる可能性があり、
騒音の結果、「安眠妨害かつ精神的苦痛」がもたらされたという場合は、
保険対象にはなりにくいと言えそうです。
(法律上の賠償責任を負う可能性は高いかもしれませんが・・・)
「対物賠償」の範囲がどこまでになるのかは、
後日改めてご紹介する予定です。