特定の機械にだけ火災保険は掛けられる?
火災保険を掛ける場合の対象は、
例えば「建物」であったり、「家財」であったり、
「機械・設備」、「什器・備品」、「商品・製品」といった形で表されます。
特徴としては、「建物」以外はそれぞれの言葉の後に
「一式」という言葉が付けられることです。
「家財一式」とか「機械・設備一式」といった具合です。
「建物」についても、
「建物一式」という言い方はあまり使わないと思うのですが、
建物と一体化した設備などは建物に含まれる、
というのが火災保険の考え方なので、
言葉として適当かどうかはともかく、
「一式」という意味合いは同じだと言えます。
つまり、「家財」や「機械」など、ひとつひとつを特定することなく、
大枠で対象を設定することができるのが、
火災保険の掛け方の特徴と言えるわけです。
総合保険と呼ばれる火災保険(例えば住宅総合保険、店舗総合保険)
では、むしろ「一式」として対象を設定しなければならないと
定められているのです。
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では、ある特定の「機械」にだけ火災保険を掛けたい場合は、
どうすればよいのでしょうか?
その場合、総合保険よりも補償の幅の狭い火災保険
(例えば、普通火災保険)に加入することになります。
「機械一式」を対象に店舗総合保険(火災保険)に加入すれば、
「盗難による損害」も補償されますが、
「ある特定の機械のみ」を対象にしたい場合は
「盗難による損害」の補償はなされない、ということになります。
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これは、保険の仕組みにとって重要な考え方のひとつである
「逆選択」と関わりがあります。
「逆選択」とは、
「保険支払いの対象になりやすい物事ほど、保険に入りたい
という要望が大きくなる」、
すなわち
「人というのは、保険の仕組みの安定的な運営という観点からは、
逆の要望を選択するものである」ということです。
これは、個人の気持ちや行動としてはやむをえない所なので、
保険のルールとして「逆選択」を排除するようなものが
設けられている訳です。
ある特定のものにだけ保険を掛けたいということは、
それだけその特定のものが保険支払いの対象
(例えば盗難の対象)になりやすい可能性が高く、
しかも、特定しているということは、
保険に掛けるものの金額も少なくて済み、
掛け金(保険料)も少なくなるので、保険制度としては
入ってくるもの(保険料)より出て行くもの(保険金)が多くなり、
安定した運営はできなくなります。
「一式」で掛けてもらうことで、
保険料(入ってくるもの)のボリュームが大きくなるだけでなく、
その「一式」の中には盗難されにくいもの
(例えば大型の機械など)も含まれることで、
出て行くもの(保険金)の割合はより薄まることになります。
ただ、どうしても「ある特定のもの」にだけ
火災保険を掛けたいという場合があるかもしれません。
その場合には、火災、落雷、爆発等しか補償されないタイプの
火災保険を選択すれば良く、全く方法が無いわけではありません。
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「逆選択」に限らず、保険には独特の考え方があります。
そして、独特の考えに基づいて運用されているため、
自分にあった保険の設定をするには
火災保険の対象をどうするか、ということひとつをとっても
注意する点があるわけです。