会社法・商業登記入門第1回「株式会社の設立方法」
こんにちは。中央区の司法書士の大越です。
このコーナーでは、平成18年5月1日に施行された会社法及びそれに関する商業登記について、平易な言葉で分かりやすく説明していきます。
毎回テーマを決め、これから起業を考えている方および現在会社を経営している方にも役立つ情報を提供していきたいと考えています。
初回である今回は、「株式会社の設立方法」について説明します。
1.株式会社設立の流れ
株式会社は、本店所在地の管轄法務局で、会社の情報(会社の商号、役員の構成、資本金の額等)を登記することによって成立します(会社法49条)。
会社設立登記手続は、ご自分ですることも可能ですが、一般の方には馴染みのない手続ですし、手続の準備や各種申請書類の作成に手間を要しますので、会社設立の専門家である司法書士に手続を任せるか、ご相談されることをお勧めします。
なお、株式会社設立までの一般的な流れは、次のとおりです。
①発起人(会社の設立を企画する人です。)による設立事項(商号等)の決定
②定款(会社の根本規則です。発起人が署名捺印します。)の作成
③公証役場での定款認証
④株式の引受け、出資金の払込
⑤設立時役員の選任(取締役など、会社によって選任すべき役員は異なります。)
⑥設立時役員による財産の調査
⑦法務局に設立登記申請(登記申請日が会社成立の日となります。登記完了までは、申請してから2週間程度の期間を要します。)
*設立登記完了後に、税務署等の官公署に届出及び銀行で法人口座開設を行う必要があります。
2.資本金は1円でも株式会社の設立が可能に
株式会社設立が容易になったことの第一点として、資本金は1円でも会社設立が可能になったことが挙げられます。
従来は、経済産業省の確認を事前に得る場合を除き、1000万円分の財産を設立時に用意する必要がありました。
この規制が廃止されたことにより、事業を思いついたので、すぐにでも株式会社を設立したいという方は、無理に第三者に出資してもらったり、借金してまで資本金を用意する必要がなくなりました。
もちろん、会社設立には、登記手続の実費や会社の設備費などが必要です。
したがって、現実には1円以上のお金はかかりますが、1000万円集めなくとも、自分の身の丈にあった規模で会社運営をスタートできます。
但し、資本金の額は、登記事項の1つとして、第三者に公示されますので、低くてもいいとは限りません。
組織としての信用力を高めるために、株式会社の設立を選択されるのであれば、資本金額の高さは、会社の信用度を上げる要素の1つとなりうるからです。
3.類似商号の登記規制撤廃
次の点として、類似商号登記規制がなくなったことが挙げられます。
従来は、同一市区町村内で、似たような商号、かつ目的が一部でも同じ(もしくは本店が同じ)会社を設立登記することは不可能でした。
類似商号登記規制が撤廃されたことにより、同一商号及び同一本店の場合を除き、既存の会社と似たような商号の利用も可能になりました。
但し、この規制がなくなったとはいえ、第三者の会社と誤認混同されるような商号を利用し、その会社に損害を与えた場合には、損害賠償請求等を受けるおそれがありますので、注意が必要です。
4.まとめ
このように、会社法では、会社設立を容易にするとともに、各会社の自己責任を強くしています。会社を経営する場合には、今まで以上にコンプライアンスの意識は重要となるでしょう。
次回は、「株式会社設立に要する具体的費用」を予定しています。