トップページ
税理士 会計士 行政書士 司法書士 社労士
弁護士 弁理士 中小企業診断士 経営コンサルタント 保険代理店
HOME > 司法書士 > 司法書士大越一毅事務所 > ブログ > 大家さんのための賃貸問題Q&A第1回「賃料滞納をしている賃借人の即退去は可能?」

« 会社法・商業登記入門第4回「定款の定め方~株式~」 | メイン | 会社法・商業登記入門第5回「定款の定め方~機関~」 »

大家さんのための賃貸問題Q&A第1回「賃料滞納をしている賃借人の即退去は可能?」

こんにちは。中央区の司法書士の大越です。

このコーナーでは、現在大手不動産会社に管理をまかせず大家業をしている方又はこれから大家業を検討しているものの、法的な問題は誰に相談していいか分からないといった方に役立つ情報を提供していきたいと考えています。
もちろん、賃借人の方にとっても、現に大家から滞納賃料の請求を受けている又は敷金返還請求をしたいと考えている場合にはそのメルクマールの1つになるかと思います。
大手不動産会社に管理を委託されている大家さんは、大抵のトラブルは不動産管理会社が間に入って対処してくれますが、ご自身又はご自身のプライベートカンパニーで管理されている方はそうもいきません。
賃料滞納・明渡し等の法的な問題については司法書士である当方にお気軽にご相談ください。


初回である今回は、「賃料滞納をしている賃借人の即退去は可能?」です。

 大家にとって、賃料は唯一の収入源ですから、その賃料が滞納されるというのは一大事です。
 大家というと、不動産を持っていて裕福そうなイメージがありますが、一概にそういう人ばかりではありません。特に大家業以外に収入が無い人にとっては、賃料を滞納されると、自身の生活費に事欠いてしまう人もいます!
 
 現在の社会・雇用情勢を考えると、急なリストラや派遣切りに会い、家賃が払いたくても払えないという人もいます。
 一方で、中には借地借家法という法律を逆手にとり、意図的に家賃を払わず長期間居座る人も現実に存在します。
 大家にとっては賃料収入は死活問題ですから、滞納している賃借人には一刻も早く出ていってもらい、新たな入居者を確保したいというのが本音でしょう。
 しかし、タイトルのように、賃料滞納をした人を即退去させることができるかというと、結論から言えば原則としてノーと言わざるをえません。

 通常、賃貸借契約書には、家賃不払いの対処として「賃料を3ヶ月分以上遅滞したときは、賃貸人は1週間の期間を空けて催告し、その間に賃借人が支払わないときは、本件賃貸借契約を解除することができる。」と定めていることが多いです。
 これを3ヶ月も待てないということで、猶予期間を設けず「遅滞があれば即解除」と定めてしまうと、借地借家法の趣旨から鑑みて、裁判では本契約条項は無効と判断される可能性が非常に高いです。裁判では1ヶ月の支払遅滞だけを理由に即契約解除ということはまず認められません。
 そのため、上記のような即解除の旨の契約条項は定めても意味がありません。

 では、家賃を3ヶ月遅滞したからといって、大家がある日賃借人の荷物を全て部屋から出し、強制的に追い出すことは可能なのでしょうか?これもノーです。 
 自力救済は認められていませんので、大家と賃借人との合意が無い限り、家賃の不払いがあるからといって、大家が一方的に賃借人の荷物等を処分することはできません。
 この場合には裁判をして勝訴判決を得てから、強制執行をする必要があります。

 そうすると、大家は賃料滞納があっても賃借人に居座られてしまうと、中々部屋を明け渡してもらうことができません。
 賃料滞納を理由に追い出したくても最低3ヶ月は待つ必要がありますし、裁判をするとなれば費用と時間がさらにかかります。
 したがって、裁判は最終手段とし、なるべくであれば任意に明渡してもらうよう交渉をすべきです。
 交渉を有利に運ぶために、以下の方法が考えられます。

 まず第1に、賃料滞納以外の解除事由を探すことです。
 例えば、余りにも部屋の使い方が悪かったり、ペット禁止なのにペットを飼っている等です。
 この解除事由が多々見つかるのであれば、即解除が可能な場合もあります。
 但し、いくら契約書に定めていても、「子供が産まれたら明け渡す」など余りにも一方的な条項は無効と判断されることもありますので、ご注意ください。

 第2に、早期に明渡してもらえるのであれば、それを条件に滞納賃料を多少免除することも視野に入れることです。
 もちろん、法的には免除する義務はありません。しかし、交渉が決裂し、裁判までするとなると、時間と費用がかかり、かつその間は新たな入居者を入れられず、その部屋の賃料収入が途絶えることになります。
 費用対効果の問題ですが、上記の点もふまえた上で、多少の損害には目をつぶっても(一部の賃料は敷金から充当できますし。)明渡しを優先させることを視野に入れつつ賃借人と交渉するのが肝要かと思います。とはいえ、何でもかんでも譲歩すると賃借人をつけあがらせることになりますので、バランスが大事でしょう。

 この他にも保証人がいる場合には保証人に連絡する等、個別事情で対応が変わってくることもあります。
 いずれにしても、いつか賃料が払われるだろうと淡い期待をして問題を放置することが一番危険です。賃料滞納があった場合には解除するかどうかはともかくとして、支払の督促等早期対応が必要です。

この記事をソーシャルブックマークやミニブログへ登録・共有する[使い方はこちら]

« 会社法・商業登記入門第4回「定款の定め方~株式~」 | メイン | 会社法・商業登記入門第5回「定款の定め方~機関~」 »

トラックバック

このエントリーのトラックバックURL:
http://www.sigyo.net/mt4/mt-tb.cgi/7243

アーカイブ

最近のエントリー

このページのトップへ