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会社法・商業登記入門第18回「ストック・オプションとしての新株予約権発行」

こんにちは。中央区の司法書士の大越です。

このコーナーでは、平成18年5月1日に施行された会社法及びそれに関する商業登記について、平易な言葉で分かりやすく説明していきます。
毎回テーマを決め、これから起業を考えている方および現在会社を経営している方にも役立つ情報を提供していきたいと考えています。

第18回は、「ストック・オプションとしての新株予約権発行」について説明します。
なお、前回の告知で、今回は「株券電子化」について解説する予定との話をしていましたが、株券電子化は昨年施行され、一般的に周知されましたので、解説を省略することにしました。ご了承くださいませ。

1.新株予約権とは?
 新株予約権とは、会社に対して行使することにより当該会社の株式の交付を受けることができる権利をいいます(会社法2条1項21号)。新株予約権は行使の際に金銭を払込みする旨定めるのが一般的ですが、不動産や債権等の金銭以外の財産を出資する旨定めることも可能です(会社法236条1項3号)。
 そして、役員又は従業員にインセンティブ目的で付与する新株予約権をストック・オプションといいます。
 会社が新株予約権を発行する目的は、ストック・オプション以外にも①オーナー株主の潜在的持ち株比率を維持するため②敵対的買収防衛策として利用するため③社債に新株予約権を付与し資金調達を行うためなどが考えられます。

2.新株予約権の発行方法
 新株予約権発行の一般的手続スケジュールは以下の通りです。
 なお、募集株式発行と同様に、総数引受契約方式の利用も可能です(会社法244条。総数引受契約方式については、第16回コラムをご参照ください。)。
 また、ストック・オプションを役員に付与する場合には、以下の手続以外にも報酬付与のための株主総会決議が必要ですので、ご注意ください(会社法361条、同法387条)。
 他方で、会社と新株予約権割当者との間で、新株予約権割当契約を締結するのが一般的です。
 a)非公開会社で無償発行の場合
 ①株主総会の特別決議による募集事項(会社法236条、同法238条)の決定
  *募集事項決定の一部を取締役会に委任することも可能です(会社法239条)。
 ②新株予約権申込予定者に対し募集事項等の通知(会社法242条1項)
 ③新株予約権申込者による新株予約権申込証の交付(会社法242条2項)
 ④取締役会決議による新株予約権割当者決定(会社法243条1項、2項)
 ⑤新株予約権割当者に対し、新株予約権割当の旨通知(会社法243条1項)
  *割当日の前日までに通知する必要があります。
 ⑥登記申請
 b)公開会社で無償発行の場合
 ①取締役会決議による募集事項決定(会社法240条)
 ②株主全員に対する募集事項の通知又は公告(会社法240条2項、3項)
  *割当日の2週間前までに通知又は公告する必要があります。
 ③申込以下の手続は、非公開会社の場合と同様です。

3.税制適格ストック・オプションとは?
 新株予約権の発行価額が有利発行であると判断される場合には、原則として権利行使時に利益分が所得として課税されます。
 そのため、役員又は従業員にストック・オプションとして新株予約権を付与した場合、株式を取得しただけで高額な所得税が課されることになります。
 したがって、これを解消するために、税制適格の要件を満たしたストック・オプションには優遇措置が適用され、権利行使によって取得した株式を譲渡した時点まで課税を繰り延べることが可能です。
 その要件(租税特別措置法29条の2第1項)は以下の通りです。
 ①付与対象が取締役又は使用人であること
  *但し、発行済株式総数の3分の1(上場会社の場合は10分の1)以上を有するオ  ーナー株主又はその親族である役員(社長等)は対象外です。
 ②権利行使期間を付与決議の日後2年を経過した日から10年を経過する日までとして  いること。
 ③年間の権利行使価額の合計が1200万円を超えないこと。
 ④1株当たりの権利行使価額は、権利付与契約締結時の時価以上であること
 ⑤新株予約権が譲渡禁止であること
 ⑥権利行使による株式の移転が会社法238条3項に違反しないで行われること。
 ⑦権利行使によって取得する株式につき、あらかじめ会社が定めた金融機関等に保管委  託又は管理等信託がされること。
 ⑧新株予約権者の氏名等所定事項を記載した調書を所轄税務署に提出すること。

 なお、②、③、⑤及び⑦の要件は、新株予約権割当契約書に記載するのが一般的です。

4.まとめ
 上記の通り、新株予約権を発行する場合には、会社法だけではなく、色々な法律・税金に注意する必要があります。
 さらには、今回列挙した以外に金融商品取引法上の開示規制の問題もあります。
 新株予約権の発行を検討している会社は、お気軽に専門家の司法書士である当方にご相談くださいませ。
 また、新株予約権の行使価格を決定する場合には、公認会計士に新株予約権の価値の算定を依頼する必要があるでしょう。
 次回は、「新株予約権を実際に発行している会社が注意すべきこと~消滅と消却の違い~」を予定しています。

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