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共感と正邪のコミュニケーション

 7月29日の第21回参院選は与党惨敗で終わりました。私は政治の専門家ではありませんが、「共感のコミュニケーション」を取るべき安倍首相が、「正邪のコミュニケーション」を取り続けた点が敗因の一つと分析しております。私はベンチャー企業経営者に、「共感のコミュニケーションから脱皮せよ」と訴えていますが、逆に大組織は共感のコミュニケーションが必要なのです。安倍首相のベンチャー・スピリットには敬意を表しつつ、経営手法の教材として、今回の選挙を使わせて頂きたいと思います。
 大政党(大組織)は共感のコミュニケーションによる組織運営が効率的です。「二大政党制」と言われますが、この体制下では、政策であれ利権であれ、思想・宗教であれ、政治的な影響力を望む全ての価値観は、二つの大政党に集約されます。大政党は少数価値観の連合体となるのです。誰であれ自らの価値観を実現するためには、大政党内で幅広い共感を集める事がポイントとなります。そのためにはある程度の現実主義を強いられますので、極端な考え方は排除されやすく、民主主義には適したシステムと言えるのでしょう。
 自民党、民主党といった大政党では、共感を得られやすい土俵の設定が、リーダーの役割です。党内議論も党派間議論も、戦略的に相手の土俵を回避して進みますので、権力闘争は論点の噛み合わないものとなります。「美しい国」と「地域格差」は対立点のように見えますが、安倍首相は「地方切り捨て」を主張しているわけではありません。「年金・政治とカネ」に至っては、共通点ですらあるかもしれませんが、この土俵を軽視した自民党は、有権者の共感を広げられませんでした。
 小泉旋風では、自民党候補は全員「郵政民営化」を叫びましたが、今回の選挙で「美しい国」を訴えた候補は何人いたのでしょうか。「戦後レジームからの脱却」は少しメジャーだったかもしれませんが、こうした面でも安倍首相は共感のコミュニケーションに失敗していました。国家観で民主党の分裂を誘う戦略でしょうが、自党にも浸透しませんでした。一方民主党は「年金・政治とカネ」を前面に出しつつ、「地域格差」を隠し味に自民党支持層の分断を図り成功しました。私は「美しい国」に賛同する一人ですが、この思想性の高い言葉は大政党向きとは思いません。首相の正義を貫く姿勢も、土俵が狭いと頑なな印象を与えるだけでしょう。小泉前首相は郵政民営化を改革全般に結びつけることに成功しましたので、頑なさが大きな共感につながりました。共感のコミュニケーションは老練さを要するのです。自民党としては安倍首相の若さが悔やまれるところでしょう。
 一方で中小政党は、正邪のコミュニケーションを中心に組織形成をするべきです。組織・資金・人材に制約があるので、一貫した明確な価値観を訴え、大政党の曖昧さ、現実主義に満足できない層を取り込むのです。公明党、共産党、社民党の埋没は、大政党型の共感度のコミュニケーションに軸足を置いた結果と私は思います。悪者や負け犬に落ちたくない気持ちが強いと、万人向けで物分りの良い言葉を使い、言論としては正しくても、結果的に認知度に優る大政党との差別化に失敗するのです。
 ベンチャー企業の成長期には正邪のコミュニケーションが重要ですが、社会への影響力が強まるにつれ、共感のコミュニケーションに回帰します。正邪のコミュニケーションは「弱者の戦略」としては効果的ですが、「強者の戦略」としては効率が悪く、言論以外の強制力を伴わないと、多様な価値観を取りまとめる事ができないからなのです。

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