トップページ
税理士 会計士 行政書士 司法書士 社労士
弁護士 弁理士 中小企業診断士 経営コンサルタント 保険代理店

株式公開を考える経営者

「株式公開にはどの程度の売上、利益が必要ですか?」とよく質問されますが、ルール上は特に基準はありません。売上・利益が少なく成長性も乏しければ、株価も低いでしょうから証券会社は商売になりません。そのためその時々の相場状況、収益状況に応じて、ある程度の売上・利益が必要とは思います。その辺りは経験的・感覚的に総合判断されているのでしょう。
固定費の小さい証券会社や実績を求める証券会社は、売上・利益の乏しい案件でも積極的に取り組むケースがあります。こうした証券会社で、引受体制の整備が遅れていたり、担当者の経験も不足していたりすると、ここが「株式公開の抜け道」となる懸念もあります。そこで本年7月から新しい引受審査ルールが施行され、どの証券会社にも大手証券並みの審査体制・審査水準を求めることとなりました。主幹事業務からの撤退を余儀無くされる証券会社も出ると予想されます。
株式公開の決め手は、売上・利益水準よりむしろ、内部管理体制の水準です。内部管理体制を整備するには膨大な資金と時間、それに人材が必要ですので、現実として業績の悪い会社は対応が難しいと思います。来年から施行されるJ-SOX対応を考えると、社長自身も内部管理体制に知識・経験が求められます。半分冗談ではありますが私は、「株式公開に業績は関係ない、内部管理体制だけ取り組めば良い」と申し上げております。社長の誤解を修正するには、このぐらい言わないと伝わりません。得意分野である業績で責任を果たしても、苦手な内部管理体制を管理部門やコンサルタントに任せていては、これからの株式公開は難しいでしょう。
 制度としては良いのですが、気になる点もあります。内部管理体制がインチキでも、政治家なら制度が守ってくれますが、上場会社の経営者はとどめを刺されます。厳し過ぎるのです。こうした状況は、内部管理体制を絶対視する考え方を助長し、経営からイノベーションを奪う恐れを感じます。公開準備を進める社長は、創造・挑戦の現実化を諦めないで欲しいと願うばかりです。企業規模に応じた社会的責任を考えれば、世界的大企業には難しい創造・挑戦に取り組んでこそ、新興市場に上場する会社に価値があります。
 話は変わりますが、最近売れているビジネス書を読むと、創造・挑戦より体制内での結果追求が重視されているようです。変化の著しいネット・インフラ等が手法(コミュニケーション技法)の源泉にある事、社会貢献や家族愛も結果から逆算して手法化される事に特色を感じます。社会全体を問うこと無く、変化の激しい部分の先頭集団に位置することで、小規模でも賢く現実的な成功を実現しようとする考え方を感じます。こうした人たちから見れば、苦労して株式公開にこだわる経営者は時代遅れでしょう。
 株式公開制度は、損得は度外視して、時代を作る人たちの夢と共にあるべきです。制約はあるにせよ、最新のビジネス手法を社会変革につなげようとする、若い経営者の新しい動きに私は注目しています。自己の成功に囚われるとイノベーション不要の時代に見えますが、自己の成長を求めると、多くの舞台が用意されております。日本の将来を見据えた経営者が、こうした環境を打ち破り株式公開を果たして欲しいと考える毎日です。

この記事をソーシャルブックマークやミニブログへ登録・共有する

« 前の記事へ | トピック一覧へ | 次の記事へ »

アーカイブ

最近のエントリー

このページのトップへ