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ベンチャー流の景気判断

 ある監査法人の代表社員から面白い話を伺いました。
 「株式公開社数は本年150社、来年100社、その後は50社前後で長期安定すると監査法人界隈では言われますが、証券業界ではいずれ170社前後まで回復するという見方が強いんです。」
 監査法人の消極姿勢、証券会社の積極姿勢の対比が面白い話ですが、背景には日本の景気状況があるように思います。
 証券会社の公開引受部門は「小さい案件は順番待ちを強いられる」などと言われますが、最近の証券会社は順番待ちを強いるほど案件を持っていないと私は推測しております。それが最近の証券会社の積極姿勢を生む背景です。
 日本経済全体は悪くはないかもしれませんが、ベンチャー企業は結構深刻です。ここにも格差問題が存在するのです。最近は上場予定企業も業績面で失速するケースが多く見られます。監査法人は大企業からも収益が取れますので、今の時期に新規公開に積極的になる理由がありません。従来型の案件が業績面から脱落し、新しいタイプの案件は監査法人を突破できず、その結果証券会社に案件が無いようなのです。

 ベンチャー企業は内需と関連が強く景気に敏感です。景気の良い時期は勝つ確率も高いのですが、景気が悪いと何をしても裏目に出て、挑戦した会社が深く傷付きます。昨年あたりから私は、「とにかくゆっくり」「公開時期は延ばせ」とアドバイスをしてきました。私は占いで知られていますので、運勢を指摘されたと捉えたクライアントも多かったようですが、実は景気を心配していたのです。
 今のような時期は、積極果敢なベンチャー企業は目も当てられない結果となりますので、選別を強める証券会社、監査法人には拾う案件が乏しくなります。それでも歴史は繰り返し、景気が戻るとこうした企業の一部は元来の積極性が活きて短期間で優良企業に一変します。
 ベンチャー企業は先が読めません。債務超過の会社も一回の提携・投資で立ち直り、弱体な管理部門が一人の人員で生まれ変わります。社長の意識に問題があっても翌日考えを変えるかもしれません。思いのほか変化率は大きいのです。特に外部環境が変化した際の変化率には驚くべきものがあります。しかもベンチャー経営者は失敗から学びます。不景気の時期は失敗の宝庫ですから、ベンチャー経営者にとっては研修期間ともいえます。研修を終え一段とたくましくなったベンチャー企業が、いずれ市場を席巻することでしょう。

 このような時期に選別を強める証券会社は、次世代の負け組に転落します。それが分かるので証券会社はこの時期に積極的なのです。株式公開関連の業務は、景気の良い時は案件を選別し、景気の悪い時は案件を拡大するのが鉄則です。ベンチャー企業の景気は、大企業と比較して悪い時期が長いので、概ね案件拡大を心掛けた証券会社が、苦労はしながらも勝利をモノにしやすいのです。
 逆にベンチャー経営者は、勝負のタイミングを絞り、景気が悪い今は、体制整備・勢力温存の時期です。例えば新たな業務提携は不景気な時期に決まりやすいと言われます。体制固めのチャンスです。逆に安直な拡大路線は慎むべきでしょう。研修疲れで余力を失ってしまっては、研修の意味がありませんので・・・

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