京都花街の経営学
京都はベンチャー企業が輩出する地。
数年前に京都のベンチャー事情を見る機会があり、「花街のコミュニケー
ションにベンチャー輩出のヒントがある」とのインスピレーションを受けま
した。
成長ベンチャーが輩出する基盤として、地域のコミュニケーションは重要
です。ベンチャーの聖地・著名なシリコンバレー躍進の秘密も、コミュニケ
ーションにあったといいます。
それ以来私は、銀座や六本木にお誘いいただくたびに「君達がベンチャー
育成の鍵」とホステスさんを相手に暴論を吐きました。コミュニケーション
・スキルは夜、女性を相手に磨かれます。(あくまでも男性経営者の場合で
すが。)花街は経営者研修センターでもあるのです。
暴論も3年、耳学問も格好が付き始めた頃、C社長のお誘いでついに祇園
を体験しました。「銀座のドン」C社長は、祇園に宿坊を持つ粋な遊び人で
もあったのです!
最高峰のお茶屋と一流の芸舞妓さん、そして「京都花街の経営学(西尾久
美子著・東洋経済新報社)」のご本まで頂きました。暴論も吐いてみるもの
です。有難うございました。
私のコミュニケーション論がこの夜、格段の進化を遂げたのは言うまでも
ありません。その成果はいずれご披露させていただくとして、もう一つ私は
思いを新たにしました。
それは人材教育です。
私は高野山真言宗のお寺に通っています。そこでは「仏教は生活全体」と
教えます。真言宗は阿字観や読経、印や真言ではないのだそうです。礼儀作
法、着付け、食事作法、掃除を繰り返し教え込まれます。共同生活をする訳
ではありませんが、お師僧や先輩・後輩の関係も昔のお寺に近いシステムを
可能な範囲で踏襲します。
こうした日常に仏は宿るのだそうです。日常の中に行の花が咲くのです。
ポイント重視でインスタントに養成すると仏に仕える僧も不良品が多くなる
とか・・・
これはどの分野にも共通する話でしょう。
国連職員を務めた知人は「日本人は35歳で朽ち果てると海外で言われてい
る」と教えてくれました。原因は創造性教育の欠如ではありません。35歳
はどの業界でも日常にルーズな人が第一線から脱落する年齢なのです。
業界人脈や知識では辿り着けないラインがあります。そこからは人間の信
用が器を形成し業績を作ります。外から見えない部分での努力、過去からの
蓄積の差が、人間の信用の基本を形成するのです。
「祇園の人間国宝」と呼ばれる90歳を越えた芸妓さんの三味線でゲーム
に興じながら、ふと芸舞妓さんらを見ると、彼女らはまさしく僧でした。一
流は厳しい日常に支えられているのでしょう。
十代の女性さえも美しかった!果たして来世紀、ここで遊べる財界人は日
本に何人残るのでしょうか?