事業承継税制の行方に期待
中小企業の事業承継税制については、これまでもお伝えしてきたところですが、平成20年1月11日の閣議決定で内容とスケジュールが固まりました。
まずスケジュールですが、平成20年度税制改正には盛り込まれず、平成21年度税制改正において「取引相場のない株式等に係る相続税の納税猶予制度」を創設し、「中小企業の経営の承継の円滑化に関する法律(仮称)」の施行日以後の相続等に遡って適用するとされています。
内容の骨子は、非上場会社を経営していた被相続人からその会社の株式を相続して経営していく場合に、事業承継相続人が納付すべき相続税額のうち、相続した議決権株式等(相続開始前から既に保有していた議決権株式等を含めて、その会社の発行済議決権株式の総数等の3分の2に達するまでの部分)に係る課税価格の80%に対応する相続税の納税が猶予されるというものです。
被相続人も相続人も、同族関係者と合わせて発行済株式の過半数を保有し、かつ、その同族関係者の中で筆頭株主であることを要しますので、オーナー経営者から株式を相続してオーナー経営者になる場合にのみ適用されます。
また、この制度の適用を受けるためには定期的に経済産業大臣の認定を受けなければならず、事業承継相続人が代表者であることや、雇用の8割以上を維持する等の要件が必要となるようです。
ここで注意しなければならないのは、本制度は基本的に「免除」ではなく「猶予」であるため、事業承継相続人が納税猶予の対象となった株式等を死亡の時まで保有し続けた場合等の一定の場合にしか免除されません。
その他の場合、相続税の法定申告期限から5年の間に経済産業大臣の認定が取り消された場合等には猶予税額の全額を納付しなければなりませんし、5年経過後も納税猶予の対象となった株式等を譲渡等した場合には、その時点で、納税猶予の対象となった株式の総数等に対する譲渡株式の総数等の割合に応じた猶予税額を納付しなければならなくなります。
しかも、これらの場合には、納付税額について相続税の法定申告期限からの利子税も支払わなければなりません。
したがって、相当長期間に渡って安定的な経営が見込まれ、家業として代々承継していく場合には事業継続の助けとなりますが、安易に利用すると、かえって猶予されていた相続税に利子税を加えた巨額の税金を支払うハメになります。
ちなみに、資産管理会社に資産を現物出資するなどして相続税逃れをすることにならないかと思っておりましたら、やはりというか、個人資産の管理等を行う法人の利用等による租税回避行為を防止する措置を講ずるということも盛り込まれました。
一緒に会社をやっている弁護士のブログより引用
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