10年春の新卒動向 採用一転、抑制へ
10年春の新卒動向
採用一転、抑制へ
金融危機の影響による企業の業績悪化が広がる中、10年春の新卒採用数を絞り込む企業が増えていることが、朝日新聞社が主要100社を対象に行った緊急調査で分かった。各社とも具体的採用計画を固めるのは年度末だが、すでに15社が前年度より減らすことを検討。ここ数年続いていた「売り手市場」が曲がり角にに来ていることが鮮明になった。
調査は10月下旬から11月上旬にかけ、各業界の代表的企業に実施した。
現在の大学3年生が対象となる10年春の採用数は「増やす」が2社、「前年並み」44社、「減らす」15社、「未定」が39社だった。
例年、年度末に実施している調査と単純に比較はできないが、「減らす」が「増やす」を上回ったのは7年ぶり。積極採用の流れに変化が見られる。
減らす企業では、「先行きの景気動向が不透明のため」(化学)、「今の経済情勢が続けば絞り込まざるを得ない」(電機)、「経済に応じて柔軟に対応していく」(サービス)など経済情勢を理由にする回答が目立った。
一方、景況感とは別に「例年のペースに戻す」(サービス)という回答もあった。
また、「未定」の企業の中には、「見通しは厳しい情勢」「良くても現状維持」と答える企業もあり、今後、さらに採用数を絞る企業が増える可能性は高い。
ただ、各社にはバブル崩壊後の採用抑制で人員構成がいびつになった苦い経験がある。そのため、「減らすとしても極端な数にはならない」(電機)、「人員勝負の業種なので一定の数は必要」(証券)など、中長期的な観点から一定数の採用を継続していく方針の企業も少なくない。
調査では、春採用以外の採用活動の実施状況も尋ねた。夏、秋、通年で行っているのは34社だったが、「春で充足できた」「経済状況に合わせる」などとして、今年は実施を取りやめた企業も5社あった。
不透明な経済情勢が続けば、こうした採用形態にも影響が出る可能性がある。(20・11・17 朝日新聞 -労働問題-)