「労災かくし」による送検増加
2008年12月号より抜粋
「労災かくし」による送検増加
平成19年の「労災かくし」による検察庁への送検件数は、140件と、10年前の約2倍に増加しています。安全衛生法では、4日以上の休業をともなう労災が発生した場合、労災保険から給付を受けたかどうかにかかわらず、「死傷病報告書」の提出を義務づけています。知っていながら意図的に健康保険扱いにしたり、通勤災害扱いにして報告書を提出していないなど、悪質な場合には労災かくしとみなされ、送検されることもあります。
「元請けに迷惑をかけたくない」
厚生労働省がホームページに掲載した送検事例では、建設現場の事故を「元請けに迷惑をかけたくない」という理由で監督署に報告しなったケースが目立ちます。
建設業では工事ごとに元請け会社が労災保険に加入し、下請けの作業員が事故にあった場合も元請けの労災保険から給付を受けますが、業務災害が増えると元請けの支払う労災保険料が高くなることがあるため、「仕事がもらえなくなる」と報告しない傾向があるようです。不法滞在者を働かせていることが発覚するのを恐れて報告を怠り、送検された例もあります。
派遣の労災が急増
派遣労働者の労災も問題になっています。厚生労働省のまとめによると、平成19年に4日以上の休業をともなう労災にあった派遣労働者は5,885人と、製造業への派遣が解禁された平成16年に比べて約9倍に増加しています。背景には、日雇い派遣などの派遣労働者が十分な安全教育を受けないまま危険な業務に従事させられていることが考えられます。
また、派遣労働者が加入する労働組合「派遣ユニオン」には労災かくしの相談も多く寄せられているといいます。禁止業務への派遣や偽装請負などのケースで、違法行為が明るみに出るのを恐れることが背景にあるのでしょう。
バレなければいいだろうと違法な働かせ方をしていると、労災事故が起きたときに報告できず、ウソにウソを重ねる結果となってしまうのです。