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残業抑制効果に疑問符

残業抑制効果に疑問符


   改正労基法成立へ   中小企業は適用外


 残業代の割増率を引き上げる労働基準法の改正案が2日の参院厚生労働委員会で可決された。近く参院本会議で成立する見通し。現在は一律
25%の法定割増率のうち、月60時間を超える部分は50%になる。だが、中小企業には当面適用されないことから、実効性を疑問視する声も多い。
 改正案では、労使が事前に協定を結べば、年間の有給休暇のうち5日分について、1日単位ではなく時間単位で取得することも認める。
施行は2010年4月。
 改正の狙いは長時間労働や過労死を抑制することだ。労働政策研究・研修機構(JILPT)のまとめでは、週49時間以上働く雇用者の割合は、欧州ではフランスの9%など一ケタ台の国が多く、米国でも17%にとどまるのに対し、日本は29%と高い。一方、残業代の割増率は、海外ではすべての残業代を50%としている国が多い。
 今回の改正は、雇用者の約7割を占める中小企業の社員には適用されない。このため、「中小企業への適用が猶予された点には不満が残るが
、一歩前進。一定の残業抑制効果はある」(長谷川裕子・連合総合労働局長)と評価する声がある一方で、法案に賛成した民主党からも「ダブルスタンダードを認めると、労働者の命の価値に格差が生じることになりかねない」といった批判が出ている。
 これに対し、日本商工会議所の佐藤健志・産業政策部副部長は『中小はもともと経営が厳しいうえに、急な発注などで残業せざるを得ない場合がある。景気が悪いなかで残業代の割増率が上がると、社員の雇用にも悪影響が出かねない」と反論する。
 サービス残業が蔓延している現状から、法改正の狙いである残業の抑止効果そのものを疑問視する声も強い。JILPTの小倉一哉主任研究員の調査では、正社員の2人に1人はサービス残業を経験、月に1~39時間が約33%、40~79時間が約10%、80時間以上が約4%にのぼる。
 過労死弁護団全国連絡会議事務局長の玉木一成弁護士は「相談を受けているのは、残業時間をあえて記録せずにサービス残業を強いるケースが大多数。1日の終業時刻から次の始業時刻lまで一定時間を空ける制度や、過労死を出した企業名の公表義務化などが必要だ」と指摘した。(20.12.4 朝日新聞 -労働問題-)

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