精神疾患 55万人孤立
精神疾患 55万人孤立
就労せず施設にも通わず
地域に暮らしながらも、仕事に就かず施設にも通っていないなど社会的に孤立している精神病患者が全国で最大約55万人に上るとの推計を厚生労働省の研究班がまとめた。周囲の偏見や誤解もあり、自宅に閉じこもりがちなケースも少なくないといい、研究班は「福祉サービスの利用を促すなど、社会復帰を手助けする支援策が必要」と指摘している。
社会復帰 支援策を
精神医療を巡っては、約7万人に上る長期の「社会的入院」患者をいかに地域社会に復帰させるかが課題となっている。しかし、入院していない患者についても、その多くが社会参加に至っていない深刻な実情が明らかになった。
調査は2007年12月、全国約百ヵ所の精神科診療所に外来受診した患者約4600人を対象に実施。統合失調症患者については別に追加アンケートも行った。
その結果、65歳未満の患者3768人のうち、6ヵ月以上、就労・就学せず、デイケアなど施設への通所もしていない患者が779人(20.7%)に上った。
疾患別の割合から全国の患者数と掛け合わせた結果、少なくとも42万7000人、最大で55万9000人がほとんど社会参加をしていないと推計。このうち統合失調症やうつ病など「気分障害」と呼ばれる疾患がそれぞれ3割前後を占めた。
統合失調症だけの解析では、患者の27.5~35.0%がこの状態にあり、平均12.9年続いていることも判明。患者は30~50代が多い。大半が親と同居しているが、介護する親の高齢化も深刻という。
研究班の平川博之医師は「数十万人の患者が社会的支援もなしに地域で孤立している。衝撃的な数だ」と指摘。「患者の社会的復帰を支援する精神保健福祉士を普及させたり、精神障害者向けの福祉サービスの利用を促したりする施策が必要だ」と話す。
東京都精神障害者家族会連合会の野村忠良会長は「誤解や偏見が根強く、多くの患者が就職どころか、施設に通うこともできずにいる。精神障害者でも地域の中で自立して生活できるような支援策をもっと講じてほしい」と訴えている。(21.1.8 日経新聞 -労働問題-)