内々定取り消し 労働審判
福岡 大学生申し立てへ
景気悪化に伴う新卒者の内定取り消しが全国で相次いでいる問題で、福岡県内の大学生が、内々定を取り消された福岡市内の不動産会社を相手取り、解決金を求める労働審判を月内にも福岡地裁に申し立てることが19日、関係者への取材でわかった。日本労働弁護団事務局次長の佐々木亮弁護士によると、こうしたケースでの新卒者の申し立ては珍しい。「早期に解決が得られれば、有効な対抗手段になる」と話す。
関係者によると、大学生は昨年7月、福岡市の不動産会社から内々定を得た。同9月下旬、10月1日の内定式の案内を受け取ったが、式の2日前に内々定取り消しを伝える書面が速達で届いた。理由は「原油高騰や金融危機などの複合的要因」。会社に問い合わせても、採用担当者は「書面の通り」と繰り替えすだけだったという。
この大学生は現在、就職活動を再開しているが、まだ内定は得られていないという。大学生は代理人の弁護士に対し、「春には社会人と喜んでいた矢先のことで、誠意のない会社の対応にも強い憤りを感じていた。自分だけではなく、取り消された学生が泣き寝入りするしかない状況に一石を投じたい」と話したという。
労働審判は、賃金の不払いや解雇などの労働問題について、裁判官と労使それぞれの実務家から1人ずつ選ばれた審判員の計3人で審理する。06年4月から始まり、原則として3回目の期日までに決着を図るため、ほぼ2ヵ月半程度で結論が出る。審判に不服があれば、民事訴訟に移る。(21.1.21 朝日新聞 -労働問題-)