企業の内部留保 雇用活用に否定的
企業の内部留保 雇用活用に否定的
経団連常務理事
非正社員の雇用を守るために、企業が蓄えている内部留保を使うべきではないかという考え方について、日本経団連の川本裕康常務理事は21日、「内部留保は必ずしも現金や預金として保有されているわけではない」として活用は困難だとの認識を示した。参考人として出席した参院予算委員会で、荒木清寛氏(公明)の質問に答えた。
荒木氏は「内部留保を原資に非正規労働者の雇用を確保できないか、春闘でよく議論してほしい」と求めた。
これに対し、川本氏は「内部留保の相当割合は生産設備や商品の在庫などの形で保有されている。これらを売却して現金などに換えることはほとんど不可能だ」と反論。雇用維持に活用するかは「個々の企業の経営状況の中での判断だ」としつつも、「企業は仕入れ代金や賃金の支払など、常に一定の現金を確保することが求められている。取り崩しをしていたら崩壊してしまう」と話した。
近年までの好景気を背景に、企業は大手を中心に内部留保を蓄積してきた。財務省の法人企業統計調査によると、資本金10億円以上の製造業大企業では、内部留保の概念に近い利益剰余金は00年度の約58兆円から07年度には76兆円に積み上がっている。
雇用情勢の急速な悪化を受け、河村官房長官が記者会見で「企業が内部留保を使って人材を確保していくのは大事」と発言するなど、労組関係者だけでなく政府・与党の一部からも内部留保を取り崩して雇用維持に充てるべきだとの声が出ている。(21.1.22 朝日新聞 -労働問題-)