傷病休職からの復帰
傷病休職からの復帰
「君の戻る場所ない」と言われたら
休日に交通事故で大けがを負ったAさんは、会社の休職制度を利用しました。休職期間が終わりに近づいて体調も回復。主治医からは職場復帰できると診断されました。ところが、上司は「君の戻る場所はない」。大変なショックを受けています。
こうした休職から復帰する際のトラブルが、後を絶ちません。就業規則などで「休職期間満了時点で復職が困難な場合、解雇または退職扱いとする」と定める企業が多く、企業側もそれを安易に使っている、と考えられます。Aさんのように主治医の診断がある場合、これを無視し、何も調べずに退職扱いにすることは許されません。
復職の際、会社が産業医など指定する医師の診断を命じることも多くあります。指定医の診断は重く、受診が就業規則などで復職条件として明記されている場合はもちろん、明確な根拠がなくても、合理的な理由なく拒否すると懲戒処分になるともあります。対応を弁護士に相談することをお勧めします。
ただ、体調を最もよくわかっていると思われるのは主治医です。主治医とよく話し合い、診断書に加えて望ましい業務内容、労働時間、復帰の際に必要な配慮の内容など、具体的な復帰条件について意見書を書いてもらうことをぜひお勧めします。医学的かつ客観的な根拠を具体的に示すことが、会社との交渉で大きな力になります。
完全に体調が回復せず、休職前と同じ業務はできない場合、会社は就労を拒否できるでしょうか。最高裁は、「他に就労可能な業務があり実際にも配置が可能で、かつ本人がその就労を申し出ている場合、復帰の拒否は許されない」と述べています。また、「休職終了後の2~3ヵ月後に完全な復帰が可能と考えられる」として退職扱いを無効とした例や、復帰準備期間を提供しない解雇を無効とした例などがあります。
08年施行の労働契約法第5条は「使用者の安全配慮義務」をうたい、同法第3条4項は「義務は信義誠実に履行されるべきだ」と定めます。会社は、「可能な限り配置転換などを行う配慮義務があると解釈されるべきでしょう。
ここがツボ
・ 主治医の判断を無視した解雇は許されない
・ 医学的・客観的な意見書などの提示が有効
・ 使用者には復帰にあたって配慮義務がある
(21.2.9 朝日新聞 -労働問題-)