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派遣会社、正社員切り

需要減、「管理者だぶつく」


 不況で次々と派遣社員が解雇されて仕事が減った分、派遣会社では正社員も「肩たたき」に遭っている。派遣事業をやめる業者も増え、右肩上がりだった業界にかげりが見えている。
 
 年の瀬も押し迫った昨年12月下旬、大手派遣会社の東日本にある事業所に勤める20代の男性社員は、同僚と一緒にオフィスに集められた。上司は「派遣社員を管理する担当者の数がだぶつきます。手を挙げるのは自由」。希望退職者募集の宣告だった。「残っても、肩たたきになる可能性は高いよ」
 担当している製造業数社の派遣社員の数は、ピークの昨年9月ごろは200人弱いて、さらに毎週、派遣の要望が確実にあった。入社の付き添い、寮の開設、給料の管理など、忙しいころは1日20時間、土曜の休みを返上して働いたこともあった。それでも「残業手当も深夜手当ても出なかった」と言う。
 取引先からの派遣希望は9月以降どんどん減り、やがてなくなった。解雇も進み、担当する派遣社員は約100人に。それも3月末までには7割ほどになる見込みだ。
 「確かに派遣社員が減ると、管理する人もいらなくなりますよね」。自嘲気味に話した。

 希望退職に応じるか、ずっと悩んだ。妻も子どももいる。ただ派遣法の改正も議論され、製造業派遣は今後、どうなるかわからない。「この業界に先はない」と思い定め、退職を決めた。
 これまでに約20人の派遣社員に解雇を言い渡した。「自分も希望退職に応じるんです」と言うと「あなたも大変なんですね」と話がスムーズに進んだ。皮肉なものを感じたという。
 3月に受け取る退職金は約100万円。それを元手になにかできないか。先のことはまだ決めかねている。

 この男性が勤める派遣会社の広報担当によると、正社員の希望退職募集は、現在検討中の営業拠点の統廃合や、人員削減計画の一環として始めたという。

 約800社の派遣会社が加盟する業界団体、日本人材派遣協会の調査によると、昨年10~12月に製造業で働いた派遣労働者数は前年同期の86.3%。減少したのは、製造業への派遣が解禁されてから初めてだ。派遣労働者の約4分の1が製造業に従事しており、業界全体が苦境に立つ。

 派遣会社は登録制で、新規に営む場合や廃止するときには厚労省に届け出が必要だ。04年12月には約2万8千だった事業者数は、08年12月に約8万1千にまで伸びたが、昨秋の「リーマン・ショック」以降は、派遣業を辞めたり、登録を更新しなかったりした事業者が大きく増えた。厚労省の統計などによると、昨年10月には381件。07年10月の127件を大きく上回った。12月も230件で、07年12月の102件の倍以上だ。

 協会の松田雄一専務理事は「製造業を中心に派遣労働者のニーズが減って事業所あたりで管理する人数が激減し、合併や廃止が相次いでいる。派遣会社は福祉や一次産業などの人手不足の業界に新しい求人を開拓しているが、求職者が職種を変えるのを嫌って、人が集まらないという状況もある」と話している。
(21.2.25 朝日新聞 -労働問題-)

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