小売・飲食以外にも「名ばかり管理職」問題広がる
2009年5月号より抜粋
未払い残業代の支払い判決
小売・飲食以外にも「名ばかり管理職」問題広がる
ソフトウェア開発会社「東和システム」に対し、社員3人が残業代の支払いを求めて争った訴訟で、3月9日東京地裁は4,500万円の支払いを会社側に命じました。
いわゆる「名ばかり管理職」の問題が、小売業や飲食業などに留まらず、様々な業界に広まってきています。
労働基準法の解釈
「名ばかり管理職」とは、社内的には管理職と位置づけられていても、労働基準法上の管理監督者とは認められない者をいいます。
労働基準法が「監督・管理の地位にある者」に労働時間の規定の適用除外を定めているため、管理監督者には残業代を支払わないとする取り扱いが多くの会社でおこなわれています。
もともと労働基準法に対する行政解釈は、「職位の名称にとらわれず職務内容、責任と権限、勤務態様に着目して実態に即して判断する」と示されていましたが、具体的な判断基準があまりなく、トラブルが多発していました。
トラブル増加と行政の新判断基準
昨年1月、マクドナルドに残業代の支払いが命じられた東京地裁の判決(本件は控訴され今年3/18高裁で和解)を契機に、「名ばかり管理職」について多くの企業で見直しが進められることになりました。
昨年9月には、厚生労働省が「小売業、飲食業に対する管理監督者の判断基準」を通達し、対応に苦慮する会社へ一応の目安が与えられました。ただし、この基準は、マクドナルドのようなチェーン店の店長を想定しているため、他業種の管理監督者への判断基準は、まだまだ十分ではありません。
最新の判断基準
今回の東和システムの裁判は「課長代理」の職位にあったシステムエンジニアの男性3名が訴えていたもので、裁判官は、「残業代の支払い義務がない労働基準法の『管理監督者』に当たるかどうかの判断基準として(1)部門全体の統括的な立場(2)部下に対する労務管理上の決定権(3)管理職手当などの支給(4)自分の出退勤の決定権ーとの要件を提示」l(3月9日共同通信配信)しました。
自社においても管理監督者の定義見直しにあたって参考にできるものでしょう。