有給休暇で裁判員 日当どうする
有給休暇で裁判員 日当どうする
会社「二重取り、納付を」
法務省・裁判所 参加意欲に水 懸念
社員が裁判員制度用の有給休暇を使って裁判員を努めた場合、国から支給される日当を会社に納付させてもかまわないか-。企業側から法務省にそんな問い合わせが相次いでいる。背景にあるのは、裁判員となった社員が給料と日当の両方を得ることは「二重取り」にあたるという考え方。
日当の納付は違法ではないが、こうした動きが広がれば、裁判員の参加意欲をそぐことになりかねず、法務省や裁判所は企業の対応に神経をとがらせている。
裁判員の日当は最高で1日1万円、裁判員候補者なら同8000円が支給される。報酬ではなく、裁判員になることで生じる損失を一定限度で補償するという位置づけで、法務省は「有給休暇をとって日当を受け取っても二重取りには当たらない」と説明する。
ところが、今年に入り、裁判員用の有給休暇を設けた多くの企業が、「裁判員を務めた社員から日当を徴収してもよいか」などと、同省に尋ねている。主に中小企業からの問い合わせが多いという。企業法務に詳しい高井重憲弁護士は「企業にとっては、たとえ数日でも社員の労働力がなくなる負担は小さくない。日当分だけでも負担を軽くしたいという企業の論理は理解できる」と話す。
法務省は厚生労働省とも協議した結果、日給を超えない範囲で日当を納付させる分には、労働者の不利益になるとはいえないので、違法ではないとする見解をまとめた。例えば、日給6000円の社員が裁判員を努め1万円の日当を受け取った場合、企業は日給6000円までであれば日当を納付するよう求められる。 ただ、ある検察官は「裁判員を務めれば、裁判期間中の昼食代などふだんより生活費がかさむこともある。日当を納付させる企業が増えると、裁判員の意欲に影響が出かねない」と懸念する。刑事裁判官の一人も、「裁判の運用上、参加意欲が下がるのは望ましくない」としながらも、「企業には裁判員用の有給休暇新設で協力してもらっており、「日当を納付させないで」とはお願いしづらい・・・」と悩ましい心境を明かす。
(労働問題ー読売新聞)