労働分配率、最高の55%
08年度 業績悪化で10ポイント上昇
上場企業の2008年度の労働分配率が55.1%と,過去25年間で最高になったことが日本経済新聞社の集計で分かった。業績悪化で企業の付加価値額が大幅に減少したことが主因で、今後は人員削減や賃金抑制が進む可能性がある。
集計対象は新興市場と金融を除く全国上場企業で単独決算ベース。08年度の付加価値額は前年度比20.3%減と、統計がさかのぼれる1984年度以降で最大の減少幅となった。合理化で人件費・労務費も2.7%減ったが、それを上回るペースで付加価値額が減少し、労働分配率は10.0ポイント上昇した。
労働分配率は、利益拡大が人件費の伸びを上回る景気拡大局面では低下する一方、景気後退局面では利益の減少が先行するため上昇しやすい。従来は金融機関の破綻が相次いだ98年度の53.6%が最高だった。50%を超えるのは02年度(50.1%)以来、6年ぶり。
一方、株主への配分を示す配当総額は17%減の4兆3323億円。減少は7年ぶりで、減少率は過去25年間で最大となった。日本企業は「欧米に比べ配当額が少ない」との批判を受けて配当額を増やしてきたが、付加価値の大幅な減少で減配・無配に転じる企業が相次いだ。最終損益が赤字で、配当性向は算出できない。
企業は労働コストの削減を急いでいる。日産自動車は今期末までに国内正社員を含め、世界全体で約2万人を削減。トヨタ自動車も出張費抑制や海外でのワークシェアリング導入などで固定費を前期比10%程度減らす方針だ。NECはグループで10年3月期中に2万人超を削減する。アドバンテストは3月末までに従業員の約4分の1にあたる1200人を削減。うち正社員で約450人減らした。
第一生命経済研究所の永浜利広主席エコノミストは「人員削減や賃金抑制が進む可能性が大きい。次期政権は職業訓練の支援などを通じ、雇用のミスマッチ解消に注力すべきだ」と指摘する。
労働分配率は法人企業統計や国民経済計算(SNA)から算出されることも多い。上場企業を対象とした集計では人件費比率が高い傾向がある中小企業が含まれないため、法人企業統計などから算出した数値より低くなりやすい。(日本経済新聞 -労働問題-)