正社員も長期雇用を悲観
リストラ不安「感じる」46%
7月の完全失業率は5.7%と、2003年4月の5.5%を上回って過去最悪を更新した。民間エコノミストの間では年末に6%台に乗るとの予測もある。雇用調整は非正規社員から正社員に広がるとの見方が多い。
その懸念を正社員自身も多くの人が持っていることが今回の調査でわかった。自分もリストラされるのではないかという不安を感じている人は「かなり」「多少は」を合わせ、46%にのぼった。
不安に思う理由としては会社の業績悪化が最も多かった。経営環境の変化の速さを社員も実感しているせいか、「いつ何が起こるかわからないから」「いつ何時、会社業績が悪化してもおかしくないから」といった声もあった。
そうしたどこか冷めた受け止め方は自分がリストラの対象になったときの対応に、よりはっきり表れている。
退職に「応じる」「条件次第では応じるかもしれない」との回答が合わせて74%に達した。一方、「応じるつもりはない」と会社にしがみつく人は16%にとどまる。年代別に見ると、「応じる」「条件次第では......」は20代が78%と最も多かったが、30代も76%、40代も68%あった。
会社の先行きを心配する人がそれだけ多い表れかもしれないが、日本の慣行のひとつとされてきた長期雇用は、もはや多くの社員が期待していないといえるだろう。
米国では1980年代に大幅な報酬引き下げや解雇が広がり、「企業は社員に冷たいもの」と働く側は思うようになった。この意識の変化が他社への移籍などの人材流動化を促したといわれている。
日本もバブル崩壊以降、希望退職募集や成果主義による賃金抑制が珍しくなくなった。「会社は社員に冷たいもの」という意識がすでに当たり前になり、調査結果に表れたのかもしれない。
米国ではIT(情報技術)産業などに人材が流れ競争力が高まった。日本は人材流動化がどこまで進むかが注目点だ。起業を支援する制度作りなども求められる。ここでも新政権は力量を問われる。
(日経新聞 -労働問題-)