通常業務以外の業務を断ったら時給減額ということは許されるのでしょうか?
Q.地元食品工場でパートを始めました。繁忙期に遠方の販売店への応援を求められ、「断るなら時給を20円下げる」と言われました。応援は構わないのですが、都合のつかないこともあります。「通常以外の業務を断ったら時給減額」ということは許されるのでしょうか?
A.労働基準法やパートタイム労働法は、労働者の資金や契約期間、仕事の場所や内容などを明示するよう使用者に義務づけています。パートについては、それらに加え、昇給、退職金、賞与の有無を文書で渡さなければなりません。
時給の減額は、契約内容の変更にあたります。本来、契約内容を変更するには、使用者と労働者の新たな合意が必要で(労働契約法第9条)、使用者が就業規則や労働協約の変更を伴わず、一方的に時給を引き下げることはできません。
使用者に「時給減額を受け入れないなら解雇する」などと言われ、書面へのサインを迫られる場合もあるかもしれません。民法は、合意が「強迫」や「詐欺」によるものと言えるときは、後に取り消すことができるとしていますが、労働者側でそのことを立証する必要があります。
ですから、減額に納得いかなければ、簡単には同意せずに、ひとまず使用者に対して文書やメールで、減額には同意しない旨をきちんと伝えましょう。後に差額分を未払い賃金として請求することができます。ただし、請求権の時効は2年なので注意が必要です。
もう一つ、注意したいのは各都道府県ごとに定められている最低賃金(時給)です。たとえ減額に合意したとしても、その額が最低賃金を下回っていれば無効となります。
今回の事例では、仕事の場所と内容の変更にも問題があるかもしれません。契約が「工場でも製造業務」に限定されているにもかかわらず、応援とはいえ「店舗での販売業務」を使用者が望むのであれば、やはり労働者との合意と、文章の交付などが必要となるでしょう。
使用者、労働者とも、いったん定めた労働契約の「重み」を再認識することが重要です。