改正労基法のポイント
改正労基法のポイント 長時間労働を減らすのが狙い
景気が落ち込んで職を失う人が増える一方、長時間労働の問題も依然として深刻です。過労死ラインとされる月80時間超の残業をしている人からの相談が後を絶ちません。長時間労働の抑制を目的とした改正労働基準法が、来年4月に施行されます。
法改正の柱は、月60時間を超える残業の割増賃金率を50%以上に引き上げる規定です。ここで言う残業は法定労働時間(1日8時間、週40時間)を超えた労働のこと。現在は何時間残業しても割増率は一律25%以上なので、60時間超の部分は一気に倍増します。
総務省の調査によると、30代男性の2割が週60時間以上働いています。月換算で80時間以上の残業をしている計算です。法改正は、従業員に長時間労働をさせるコストを引き上げ、残業時間を短くしようという狙いがあります。
午後10時~午前5時の深夜労働はもともと25%以上の割増賃金率が定められており、この時間帯に月60時間超の残業をした場合は、計75%以上の割増率となります。「残業代欲しさの長時間労働が増える」との慎重論もありますが、長時間残業の理由は7割が「仕事が時間内には片づかない」で、「残業代」は3.5%にとどまるとの調査もあり、残業を抑制する効果の方が高いと思います。
このほか、月60時間超の残業については労使協定があれば、労働者の希望で割増賃金のうち、今回引き上げられた部分の代わりに代替休暇を取れる制度や、有給休暇を1日単位でなく1時間単位で取れるような制度も導入されます。
心配なのは、働いた分の残業代が支払われないサービス残業の存在です。割増率をいくら高めても、会社が法律を無視してしまっては意味がありません。こうした場合、労働者は毅然とした態度をとるべきです。会社に異を唱えるのをためらう気持ちも理解できますが、最近では労働基準監督署に申告すると、熱心に動いてくれるようになっています。自分の身を守るのが第一だと考えましょう。
割増率アップは残念ながら、中小企業には少なくとも3年間、適用が猶予されます。(労働問題―朝日新聞―)