変形労働時間制に関して運用の注意点
-判例から学ぶ制度運用の注意点-
2010年4月にパスタ店「五右衛門」を運営する日本レストランシステム(東京都渋谷区)の元アルバイトが「変形労働制の悪用」を訴え、東京地裁は同社に残業代や付加金の支払いを命じました。
この判決は、変形労働制がサービス業などに広がる中で安易な制度運用に警鐘を鳴らした形となったので、改めて制度の把握と運用上の注意点をまとめます。
◇変形労働時間制とは
変形労働制とは、時期や季節などによって忙しさに差がある場合などに適用できます。1カ月や1年など一定の期間について、週あたりの平均労働時間が法定労働時間以内(週40時間)であれば、特定の日や週が規制を越えた労働時間となっても残業代を払わなくてもよい制度です。労使協定、又は就業規則に「変形労働期間の起算日」「各日・各週の労働時間」「労働者の範囲」を定め、周知させる必要があります。
◇今回の判決から学ぶ注意点
1.制度の周知
元アルバイトは、変形労働時間制を会社が適用している事を知らされておらず、就業規則も周知されていなかった。
2.運用上の違反
この社は、1カ月単位の変形労働制を適用していたのですが、「就業規則では1か月単位でシフトを決めるはずが、実際は、半月ごとのシフトしか決めていなかった」「変形労働期間の起算日が明らかでない」等の制度運用上の違反を指摘されました。
ここのように変形労働制を適用させるには「労使協定の締結、及び届け出(1か月単位の変形労働制は、労使協定又は就業規則その他これに準ずるものに必要事項を定める)」「周知」「正しい制度運用」の3点が求められます。今回の判決を機に、制度を適用している会社は、改めて正しく運用されているかどうかの確認をされることをおすすめします。(月刊人事スクエア7月号より)
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