Q.現在、失業中で雇用保険の基本手当を受給中です。資格取得の為に学校へ通おうとした所、教育訓練給付の存在を知りました。教育訓練給付と基本手当は併給できるのでしょうか?
A.教育訓練給付の受給条件
1.訓練開始の日(基準日)に被保険者であること
2.被保険者でなければ、離職後原則1年以内
3.被保険者期間が3年以上(初回の受給は1年)
(⇒過去に教育訓練を受給するために算定した被保険者期間は含めない)
上記の条件を満たせば受給でき、基本手当と調整されることはありません。
事業主に解雇されましたが、不服なので裁判所へ提訴中です。このように解雇の効力を争っている場合でも、雇用保険の基本手当は受ける事が出来るでしょうか?
下記の場合に限り資格喪失の確認を行い「条件付給付」が支給されます。
1、解雇された被保険者が、解雇を不当として離職証明書の記載内容について相違ない旨の署名・押印を行わないが、離職証明書の欄外に「○○に提訴中であるが、基本手当の支給を受けたいので、資格喪失の確認を請求する」と記入し、署名・押印を行うこと。
2、現在提訴中で、まだ判決が行われていないこと。
賃金が支払われるまでの暫定的措置として、基本手当が支給されます。しかし、判決によって解雇時に遡及して賃金が払われる場合は、基本手当を返還することとなります。
下記の①~④のどれに当てはまるかによって対応が異なります。
①外国へ出張して働く場合
②国内の適用事業で雇用される者で、海外支社に勤務する者
③国内の適用事業の雇用関係を残したまま一定期間、国内の事業主の命で海外の事業主に雇用される者
④国内の適用事業の雇用を終了し、海外の事業に雇用される者
①・②の場合
適用事業との間の雇用関係に変更はない為、資格は継続します。
③の場合
出向した労働者は海外の事業主と新たな雇用関係を結ぶことになりますが、その出向が国内の事業主の命により行われ、雇用関係が続いている在籍出向であれば、資格は継続します。
④の場合
国内の事業主と雇用関係が終了している為、資格を喪失します。
なお、日本の事業主が現地において採用する労働者は、その国籍のいかんを問わず、日本の雇用保険の被保険者とはならないので、注意が必要です。
雇用保険の基本手当等を受給するには、公共職業安定所に本人が「出頭」しなければなりません。雇用保険法第4条で「失業とは、労働の意志及び能力を有するにもかかわらず職業に就くことができない状態」となっている為、代理人ではいけないのです。
失業者本人の体調がすぐれないのであれば、公共職業安定所で受給期間の延長の手続きを検討してみてはいかがでしょうか?こちらは、代理人又は郵送で手続き可能です。
条件:疾病等で30日以上職業につけない状態
期間:上記の状態に至った翌日から一カ月以内に手続き
提出:所定の様式に医師の証明書、離職票
一般的な取り扱いとしては下記の4つの方法が良いと思われます。
①職場の上司が受診を勧める
②産業医に面接させる
③産業医から専門医に紹介して受診させる
④専門医の意見を聞いて休職を発令する
産業医のいない企業では、労働者健康福祉機構の各都道府県産業保険推進センターの専門医に相談する方法もあります。なお、相談は無料で出来ます。
Q.専門業務型裁量労働制の職場で、従業員が自分の勝手な判断で休日を振り替えた場合、会社は認めなければならないのでしょうか?
A.勝手な休日の振替は認める必要がありません。
裁量労働制は、業務の遂行手段及び時間配分の決定等に関し使用者が具体的な指示をしないこととされていますので、出勤時間・帰宅時間は労働者が自由に決めることができまが、休日の位置を変える権限はありません(平成12・1・1基発第1号)。就業規則に休日を振り替える旨の規定を設けていたとしてもその必要があるか否かを判断するのは使用者です。
週をまたいでの振替となった場合には割増賃金の支払いが必要となる可能性もありますので、休日、深夜労働については勝手に行わず、上司への事前の届出、許可・承認の上で行うようルール化しておくことが大切です。
Q:労災保険の未手続き事業者には、事故が発生した時は100%の費用徴収が行われると聞きました。遺族・傷害補償年金の対象になる災害を起こした時は、受給権者が亡くなるまで100%の徴収が続くのでしょうか?
A:労災保険の未手続き事業場で事故が発生した場合でも、労働者に対する保険給付は行われます。ただし、その費用の全部または一部を事業主から徴収します。徴収割合は下記のようになります。
●保険関係成立届の提出について行政機関等から指導を受けたにもかかわらず、10日以内に成立届を出していない場合・・・100%
●事業開始後1年を経過してなお成立届を出していない場合・・・40%
療養開始した日(即死の場合、発生の日)の翌日から3年以内に支給事由の生じたものに限られます。
遺族・障害補償年金等についてもこの期間中に支給事由が生じ、かつ、この期間に係る分のみが費用徴収の算定ベースになります。
社員が会社の意向に反して、勝手に労働基準監督署へ行き、労災請求して認定されました。労働基準監督官から休業最初の3日間の休業補償をするように指示されましたが、補償をしないといけないでしょうか?
疾病が業務に起因していることが明らかであれば、労災保険法第14条より労災保険からの休業補償給付は「第4日目から支給する」とあるので、休業最初の3日分については、労働基準法第76条より会社に支払いの責任があるとされてます。
労災保険給付決定は、会社や第三者にまで労災扱いを強制する力はありませんが、3日分の休業補償をが行わなければ、労働基準法第76条として送検されます。
会社として、その疾病が労災ではないと考えているのであれば、労働基準監督署に労災決定理由について納得がいくように、説明を求めてみてはいかがでしょうか?
60歳の定年到達後、従業員に安心感をあたえるため、65歳までの5年契約を結ぼうとしています。当人が途中で退職をしたいと申し出た場合、どうなるでしょうか?
原則、期間を決めて労働契約を結ぶ場合最長3年までと定められていますが、「満60歳以上の労働者との間に締結される労働契約」は最長5年まで認められています。
(労働基準法第14条)
当面の間、1年を超える労働契約が締結された場合、「労働者は1年を経過した日以後においては、いつでも退職することができる」(労働基準法第137条)とされていますが、期間5年が適用される高度専門職、60歳以上の高齢者には、適用されません。よって、民法第628条が適用され、「やむを得ない事由があるときに限り」契約を解約できますが、損害賠償請求の可能性もあります。
契約の双方が同意すればもちろん契約解除も可能ですが、就業規則などに退職のルールを盛り込むのが良いでしょう。
遅刻した場合、ボーナス規程で出勤率の評価に加えて、遅刻回数に応じて減給するのは賃金の二重カットにあたりますか?
遅刻した場合、時間対応で賃金カットを行う事は減給の制裁に該当しない一般的な対応です。しかし、「遅刻に対応する時間を超える減給」は制裁とみなされますので、注意が必要です。
⇒「遅刻・早退の時間については賃金債権が生じないのであるからその分の減給は労働基準法91条(減給の制裁)の制限を受けない」(昭和63.3.14基発第150号)
賞与を支払う場合、「賞与とは、定期または臨時に、原則として労働者の勤務成績に応じて支給されるものであって、その支給額が予め確定されていないもの」(昭和22.9.13基発第27号)ですので、出勤率の評価に加え、遅刻の回数に応じて減額しても問題はありません。
減給の制裁を行う場合、賞与から一定額を差し引くことも可能ですが、「1回の事由について、平均賃金の2分1を超え、また、総額について10分の1を超えてはならない」(労働基準法91条)という制約を受けます。
よって、このケースは時間対応で賃金をカットして賞与でマイナス査定をしても賃金の二重カットにはあたりません。
会社から解雇予告を受けたと同時に休業(賃金6割)を命じられました。
解雇予告なら30日分の賃金を受けるはずなので、違法ではないでしょうか?
従業員を解雇する場合(労働基準法第20条)は通常、以下の方法があります。
①30日前に予告するか、30日分の平均賃金(解雇予告手当)を支払う。
②予告と解雇予告手当の併用(例:10日前に予告し、20日分の平均賃金を支払う)をする。
会社が休業を命じた場合、民法536条第2項に賃金請求権が確保されており、労働関係が存続しているので、労働基準法第20条の違反(6カ月以下の懲役または30万円の罰金)ではないとされています。
よって、休業の代わりに30日分の解雇予告手当の支払いを求めても認められないでしょう。
賃金請求権の行使ということで、100%の賃金と60%の休業手当の差額を裁判で請求可能ですが、民法上の請求が認められないケースも有り得えます。
30日前に解雇予告をした所、労働者より残った5日の年休消化後30日をカウントすべきだと主張されました。解雇日をずらすと、一か月分の社会保険料の負担が発生してしまうのでどうすればよいでしょうか?
行政解釈では、「年次有給休暇の権利は、予告期間中に行使しなければ消滅する」(昭和23.4.26基発第651号)とされていますので、年休の取得日数も含め、30日前の解雇予告でよいでしょう。仮に、年休の残日数が多く、予告後30日の間に全て年休を消化できなくても法的には問題はありません。
労働者の意を汲んで、有給消化後からカウントする場合
労働基準法20条第2項に、「予告の日数は、1日について平均賃金を支払った場合においては、その日数を短縮することが出来る」とあります。
よって、25日前に予告して、5日分の解雇予告手当を支払えば、予定どおりの日付で解雇が可能です。
(解雇予告と予告手当の併用)
法的な義務は存在しない点を相手に説明した上で、円滑な解決を図るのが大切です。
選挙に立候補するという「公民権の行使」の為、準備期間も含め3週間の年休を請求された場合、準備期間も休暇を与える義務はあるでしょうか?
「選挙準備」を理由とする場合
通常の年休請求と同じ処理が可能です。
従業員が事前に調整をしなかった場合、使用者にある程度の「時季変更権」が認められた判例があります。(時事通信社事件=最判 平4.6.13)
「公民権の行使」として休暇を請求された場合
当選のために必要な法定期間中の選挙運動は、広く公民権に含ませて考えるべきと解されています。
(労働基準法コンメンタール)
労働基準法第7条にも有るように、法定期間中の休暇は与えるべきですが、「有給か無給かは当事者間の自由」とされていますので、無給で処理が可能です。
労働基準法第7条
「公民としての権利を行使するために必要な時間を請求した場合、拒んではならない」
補足:裁判員制度による休みも「公民権の行使」にあたるので、同様の処理が可能です。
出向・配置転換・転勤の場合
労働者と個別の特約がない限り、通常の人事と同じなので可能です。
転籍・移籍出向の場合
労働関係そのものが変更になるので、労働者本人の同意がなければできません。
(民法第625条第1項より)
ただし、「会社分割に伴う労働契約の継承等に関する法律」による転籍は、労働者本人の承諾がなくても可能です。