労働基準法には、会社が常時10人以上の労働者を使用する場合、就業規則を作成して労働基準監督署に届け出なければならない旨の規定がありますが、この規定があるために小さな会社は就業規則を作成していないことも多いようです。今回は、ある会社で新入社員から労働条件についての抗議を受けたときの事例を紹介します。
A社長「うちの新入社員が何度注意しても遅刻ばかりするので、1時間分の給料をカットしたのですが、その社員から、5分の遅刻で1時間分の給料が減らされるのはおかしい、と強く抗議されました。最近の若い者は自分の遅刻を棚に上げて...」
社労士「御社の就業規則の懲戒規定はどのように記載されていますか」
A社長「先生、うちは5人しか社員がいないので就業規則なんて作成していませんよ」
社労士「それであれば5分部分をカットすることはできても、1時間分をカットするのは無理ですよ」
遅刻者を懲らしめるために安易にこういったことをしてしまう会社も多いようですが、遅刻してきた社員にとっては生活がかかっていますので、突然給与が減らされてしまうと一大事です。
通常、就業規則に書かれてある懲戒規定には、事前にこんなことをしてしまうとこれだけの罰を受けることになると明示しておき、社員にそのような行為をしないよう警告する意味もあります。もし、事前に懲戒のルールもなく自由に懲戒ができるとなると、使用者がその場の判断や感情で懲戒権を行使できることになってしまいますので、社員のやる気や信頼も失われてしまいます。
今回の事例では、遅刻した新入社員に関して、仕事をしていない時間分の給料をカットするのは問題ありません。しかし、それを超えて給料をカットしてしまうと、過剰な「懲戒権の行使」にあたりますので、原則として就業規則で事前にルールを定めておかなければなりません。
懲戒権の行使には、減給処分のほかにも注意に始まり、始末書を書かせたり、出勤停止を命じたり、場合によっては懲戒解雇まであり得ます。
どんなことをしてしまうと、どのような処分を受けるのか-が決まっていれば、それを見た社員が思いとどまるチャンスになります。このように、会社の"ルール"は悪い社員を懲らしめるためにあるのではなく、事前に示すことで違反者を出さないために存在します。つまり、ルール=就業規則は、「社員を守る」ためにあるのです。
仮に、たびたび問題を起こす社員がいたとしても、就業規則がないばかりに懲戒権の行使ができないようでは、まじめに働いている社員にも不満がたまってしまいます。
労働者が10人未満の会社でも、よりよい職場をつくり、会社を大きく伸ばしていくために就業規則を作成する意義は大きいと思いますよ。
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