不景気で会社の業績がパッとしない状況が続き、昇給やボーナスに期待ができないとなると、1人で稼ぐ力がある優秀な社員が独立を考え始めても不思議ではありません。今日はそんな社員の行動がトラブルに発展したケースを見てみます。
A社長「先日当社の営業課長が起業するということで退職したのはご存じだと思いますが、どうもうちの顧客に独立のあいさつと称して低価格を売りにした勧誘をしているようなんです。顧客から、どうなっているんだ、というクレームが入ったり、実際に解約に至ったケースも出始めています」
社労士「やっぱりそうですか。先日締結をお願いした誓約書に一文入れておいてよかったですね」
A社長「それが、誓約書を書いてからやめるようにと言ったのですが、わかりましたと持ち帰ったきり、次の日から有給休暇の消化に入ってしまい、それっきり退職しました」
社労士「そうですか。でも、顧客情報は特定の人しか見ることができない営業秘密ですよね」
A社長「それが、うちの場合アシスタントがすぐに連絡できるようにということで、誰でも見ることができるようにサーバー上で共有しています。きつとそれをコピーして持っていったのだと思います・・」
労働者は労働契約上の義務として使用者の営業上の秘密を保持すべき義務を負っています。しかし、退職した後となると、本人の営業の自由もありますので一筋縄には行きません。とはいえ、事前に労働契約、誓約書、就業規則などに退職後も会社の営業秘密を使用、開示しない旨の義務を定めておき、違反した場合には差し止め請求や損害賠償を請求できるようにしておくことが有効です。
今回のケースでは、このような事前の定めはなかったようですが、事後的な救済が認められる可能性はあります。顧客情報が営業秘密にあたれば不正競争防止法によって不正な使用、開示について差止請求や損害陪債請求が可能です。ただ、みんなが見られるところに保管していたとなると、営業秘密としてきちんと管理していたかについても疑問が残ってしまいます。
企業の情報漏洩がニュースになることがありますが、顧客や取引先の信頼を失う損失は大きなものがあります。
会社が被る損害の大きさを考えると、事後的な救済だけでは不十分といえます。日々の営業秘密の管理を徹底し、就業規則や労働契約書などで営業秘密を保護する規定を設けたうえで、営業秘密保護の重要性をきちんと教育しておくなど事前の対策がとても大切です。
会社が長年の営業努力で積み上げてきた顧客の信頼と収益の基盤が巌客リストに詰まっています。ちょっとした管理の甘さでこれらを失うことがないように注意しましょう。ちなみにこのケースでは、弁護士を入れた話し合いで何とか事なきを得ました。
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