急にアルバイトが病欠した、決算が終わらない、客先でトラブルが発生した―などさまざまな理由で、せっかくの休日にもかかわらず出勤しなければならないことが出てきます。
その際に使用者からの事前の業務命令により休日を振り替える場合を「振替休日」といい、もともとの休日に働いても休日手当はもらえません。他方、このような事前の業務命令がない場合は振替休日にはなりませんので、休日手当や残業手当の支払いが必要になります。
会社によっては、休日に出勤した場合は休日手当や残業手当などを支払ったうえで「代休」を付けてくれるところも多いので、仕事を調整した上で、できるだけ早めに取得して疲労の回復に努めたいところです。
でも、この「代休」、もともと仕事が忙しいために休日出勤が発生することから、なかなか取得できずにどんどんたまっていく社員が多い会社があります。もちろんこんな状態ですから有給休暇の消化率も一向に上がりません。そんな中、ついに社員の一人がキレてしまいました。
社員「課長、もう体力的に限界です。今までたまった有給と代休を使って2カ月の長期休暇を取らせて頂きます」
課長「ちょっと待ってくれよ。有給は仕方ないとして、決算が近いのに2カ月も続けて休まれたら売り上げ目標が達成できなくなってしまうじゃないですか」
社員「もう決めたことです。今までがんばって厳しいノルマを達成してきたのですから、このぐらいは当然の権利ですよ」
いかがでしょうか。この会社の就業規則をみると、代休を与えるという規程はあるものの、代休の取得方法については全く触れられておらず、有給休暇と同様に社員が自由に時季を指定できるのか、それとも会社が取得日を指定できるのかが不明確でした。
代休日とは、労働義務のある所定労働日についてその日の労働義務を免除し、労務提供債務の免除を得させる債権者である使用者の意思表示による休暇と考えられます。そうすると、民法519条により債務者の意思のいかんにかかわらず、債権者の一方的な意思表示により免除することができます。したがって、会社側の一方的な代休日の指定も有効という結論になります。
今回のケースでも、社員の側が、必ずしも連続して2カ月の休暇にしなければいけない理由がないことから、会社側も休日が取れない労働環境を改善するという約束をしつつ、1カ月の有給休暇の後、毎週水曜日に代休を消化することで落ち着きました。
代休の制度を設けた当初は社員の疲労回復を目的としていたにもかかわらず、いつの間にか目先の利益に追われて長時間労働が黙認されていた状況を改善するきっかけになった一件です。思い当たる会社は気をつけましょう。
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