疾病労災で数千万円の企業負担も!
こんにちは!社会保険労務士の吉永晋治です。
皆様の会社では労働保険の申告はお済みでしょうか?税務署ほど厳格ではありませんが、催促状が発せられると納めるべき労働保険料額に対して年14.6%の延滞金が課せられることがありますので、申告がお済でない場合は急いで申告しましょう。
だからという訳ではありませんが、今月は労災保険の話をしたいと思います。
そもそも労災保険は労働基準法(以下、労基法)に定められている使用者の労働者に対する「災害補償」のセーフティーネットとして制度が発足しました。
あまり興味ないかもしれませんが、労基法の条文を紹介します。
労基法75条
「使用者が業務上負傷し、又は疾病にかかった場合は、療養補償として必要な療養を行い、又は療養費用を負担する」
労基法76条
「療養のために、労働することができないために賃金を受けない労働者に対しては、療養中平均賃金の100分60の休業補償を行わなければならない」
労基法77条
「業務上の疾病が治った場合にその身体に障害が存するときは、その障害の程度に応じて、障害補償を行わなければならない」
労基法78条
「労働者が業務上死亡した場合には、遺族に対して平均賃金の1000日分の遺族補償を行わなければならない」
労基法79条
「労働者が業務上死亡した場合に葬祭を行うものに対して、平均賃金の60日分の葬祭料を支払わなければならない」
労災の給付は上記の条文に基づいたものになっています。つまり業務上の傷病に対しての治療費・休業補償・障害補償・遺族補償が労災の給付になります。
これらの補償を各々の企業が独自に準備するのは困難なため、労災保険制度が誕生しました。ここで注意したいのは業務上の災害については企業が労災保険に加入していなくても労基法により補償の義務が発生するということです。
もし未設置の企業があるなら、必ず加入して下さい。場合によっては労災の給付について企業が一部の負担を強いられます。労災の給付は非常に手厚いので企業が自己負担するとなると大変です。
そしてもう一つ労災に関して私が懸念しているのは「使用者責任」です。
業務災害が起こった時に使用者の労働者に対しての安全配慮義務を問われて多額の損害賠償請求が起こされて現実に企業側に数千万円の損害賠償を求める判決も数多く出ています。この損害賠償額は労災の補償では足りず、企業に大きな自己負担を強いることになります。
さらにこの前提となる労災認定について、最近は過重労働による心疾患・脳血管疾患・精神疾患などの疾病による労災認定が急激に増えており、それがそのまま使用者責任を問う訴訟に発展しているケースも少なくありません。
これまで比較的労災事故と縁のなかったサービス業の企業にもこれらの疾病労災は他人事ではありません。
労災保険に加入することはもちろんですが、この使用者責任を問われるリスクを勘案すると労災保険に上乗せして自助努力で備えることが必要になります。
詳しくは吉永までお問い合わせください。
(法人コンサルティング部・社会保険労務士 吉永晋治)