裁判員制度実施を前に企業が取り組むべきこと
こんにちは!社会保険労務士の吉永です。今日は平成21年5月21日から実施される「裁判員制度」についてお話しようと思います。
なぜ社会保険労務士の私が裁判員制度のお話をするかというと、最近、就業規則の見直しの打ち合わせなどで社長から「社員が選ばれた場合は拒否できないのか?」「有給休暇を使わせてよいのか?」など質問をいただくことが多かったためです。
そんな訳で裁判員制度について人事労務上社長に知っておいて欲しいことをご紹介します。
そもそもこの「裁判員制度」導入の背景は刑事裁判があまりにも専門的になり国民生活からかい離してしまったため、一般の国民が直接裁判に携わることで国民が理解しやすい裁判を実現するためだそうです。導入のお題目はともかくこの制度が会社にどんな影響を与えるかを見ていきましょう。
1.裁判員候補に選ばれる確率が1年で1/330、裁判員に選ばれる可能性が1/4000
裁判員候補と裁判員の違いはご存知ですか?
来年の裁判員制度実施以降、一つの刑事事件に対して約50人から100人の裁判員候補が裁判の6週間前に呼び出され、その場で6人以上の裁判員が選出されるようです。ですから候補の人は半日でお役御免という訳です。
一方、裁判員に選ばれた人は平均で1日5時間×3~5日(事件によっては5日超になることも)拘束されることになります。
もし自社の社員が裁判員候補に選ばれると半日から長くて1週間くらい会社を休むことを覚悟しなければならないようです。裁判員に選ばれないために馬鹿なふりをして来い!なんて言いたくなりませんか?
2.裁判員になることを辞退できないのか?
基本的に仕事が忙しいという理由では辞退できないようです。
裁判員法では「とても重要な仕事でその人が処理しなければ、著しい損害が生じる」と裁判所が認めた場合にのみ辞退が認められるとのことですので、基本的に辞退はできないと考えた方が良さそうです。
ちなみに堂々と辞退できる人は
・70歳以上の人
・学生、生徒
・地方公共団体の議会の議員
・重い病気、両親の葬式、妊娠中または出産直後などやむを得ない理由がある場合
に限られています。裁判所の許可なく裁判員になることを拒否すると、10万円以下の過料に処せられます。
3.社員が裁判員に選ばれた場合、有給休暇を取得させて良いのか?
裁判員として出廷するために会社を休む場合に有給休暇を充てることは問題ありませんが、会社側が有給休暇の取得を強制することはできません。
ただし裁判員の仕事に従事するための休暇制度を設けることは義務づけられてはいませんので無給としても問題ありませんが、現実には有給の特別休暇にする企業が多くなりそうです。
懸念されるのは裁判員として従事する日だけ特別休暇にするだけでは済まない可能性があります。
というのは裁判員制度の対象になる事件は殺人、強盗致死傷、危険運転致死、身代金目的誘拐、などの重大犯罪であるため、裁判員としてこうした裁判に参加することは精神的に大きなダメージを負う可能性があります。
そのため判決翌日から仕事に復帰できない社員もでてくるかもしれません。
以上のことから企業としても一定の準備が必要になりそうです。
特別休暇について検討も必要でしょうし、部下が裁判員に選ばれたことを上司が第三者に話すと罰せられる等、裁判員制度を踏まえた社内ルールの策定と周知徹底が必要になります。
今秋には裁判員候補者名簿が各市町村で作成されます。来春の施行に向けて社内で検討してみましょう。
◎就業規則整備・改訂に関するお問い合わせは・・・ 0120-7109-32
(法人コンサルティング部・社会保険労務士 吉永晋治)