退職金の大いなる問題に気づいていますか?
こんにちは!社会保険労務士の吉永晋治です。
今回は平成24年3月末までに廃止になる税制適格退職年金(以下適格年金という)についてお話したいと思います。
多くの中小企業が生命保険会社などで適格年金に加入しており、平成24年3月末の廃止の話は知ってはいたけど、先送りにして今日まで来てしまった会社もまた多いのではないかと思います。
総務部長さんによっては「面倒だから自分が定年した後に後任者に任せるよ」と公言される方もいらっしゃいます。
この問題は社長さん本人が本腰を入れて取り組まないとなかなか先に進みません。
なぜなら適格年金を廃止したり中小企業退職金共済制度(以下中退金という)に移行したりすることは手続きが面倒であることに加えて、社員がこれを手がけることで社員自身が受け取る退職金を減らす可能性が高いからです。
自分の退職金を減らすかもしれない面倒な業務を率先して自ら手掛ける社員はなかなかいません。
しかし企業にとってはこのことを先送りすることは大きなリスクに発展するのです。
ご存じかと思いますが、今一度適格年金の廃止について整理しておきたいと思います。
適格年金は平成24年3月末日までに廃止(解約)するか、確定給付型企業年金、確定拠出型企業年金、中退金等に移行しなければなりません。
それにはまず適格年金を廃止にするのか移行するのかを決めなければなりません。
さらにそれに伴って多くの場合、退職金規定と現在の積立額の乖離、積立不足が明らかになります。
適格年金の廃止・移行はメリット・デメリットを勘案して決定することになりますが、中小企業だとその選択肢は主に以下の3つに絞られます。
1.廃止
2.中退金に移行
3.401kに移行
廃止(解約)はいざやるとなると、社員の所得税や住民税の問題、誓約書の取り付け等の社員との個々対応など大変ですから他の制度への移行がお勧めです。
そしてリスクとして潜在的に抱えているのが「積立不足」の問題です。
当初適格年金の運用利回りは5.5%と見込んでいましたが現状は1%程度ですから、企業規模や規定、適格年金の掛け金にもよりますが、経験上では50名くらいの企業だとその積立不足は1000万を超えることが多いようです。
この積立不足の解消の一番簡単な方法は移行時に積立不足を会社が準備することですが、それができる会社はなかなかありません。
現実的な対応法は退職金規程を変更してその水準を引き下げる企業がほとんどです。
しかし既に規定がある以上その退職金の水準を引き下げることは社員の既得権を侵すことになるので、安易な対応は大きなトラブルになります。
この対応は企業によって異なりますので、本を読んでいくら勉強してもあまり役に立ちません。
やはり企業の事情やこれまでの経緯を勘案しながら、専門家の意見を聴いて慎重に進めていくべきです。
ただ積立不足は日一日増えていきますので、1日も早いこの問題への着手をお勧めします。
退職金の問題は社員でなく社長の仕事です。
やること多過ぎるよと愚痴の一つも言いたいところでしょうが、会社の繁栄のため一緒に頑張りましょう。
(法人コンサルティング部・社会保険労務士 吉永晋治)