休業損失というリスク 「利益保険」をご存じですか?
◆意外と大きい休業損失◆
通常多くの企業は、自身の財産、特に建物について、火事などによる損傷に備えて火災保険に入っています。
しかし火事が企業に与えるダメージは、建物という財産の損失だけではありません。
その建物が工場などの生産設備であったり、家賃収入を生み出すテナントビルの場合、火災によって休業を余儀なくされたり、使用不能の状態に陥ったりする訳です。
工場であれば生産がストップし、売上が落ち込んでしまうことになります。
この生産や売上の落ち込みが休業損害(損失)です。
企業によっては、建物などの財産の滅失よりも、休業損害の方が深刻な場合もあるでしょう。
この「休業損害に対して保険をかけることができる」ということが、実はあまり知られていないのではないかと思うことがあります。
◆加入率が低いのはなぜ?◆
名称は様々ですが、いわゆる「利益保険」の加入率は、統計を調べたわけではありませんが、火災保険と比べて格段に低いはずです。
理由はいくつか考えられるのですが、ひとつは休業損害が「間接損害」であるということが挙げられると思います。
火事による直接の損害は建物などの「モノ」の損害です。
多少端折った表現をすれば、「目に見える」損害です。
それに対し「間接損害」は「目に見えない」「目に見えにくい」損害なので、意識はしにくいのかもしれません。
それでなくとも保険はまだ起こっていないことを想定してかけるというものですから、より実感がわきにくくなっても無理からぬことです。
◆個人生活に例えてみると?◆
ただ視点を変えると、この「休業損失」に実感がわくかもしれません。
例えば個人生活に置き換えた場合、交通事故でケガをしたとします。
ケガにより肉体に損傷が与えられたことで、治療という行為を通じて回復(復旧)に努めなければなりません。
自然治癒力で完全に回復すればお金もかからずいいのですが、医療機関に通って治療をすればお金がかかります。
これがケガをしなければかからなかった余計な出費(損害)です。
これこそまさに「直接損害」です。
しかしケガによる損害はこれだけでしょうか。
入院したり自宅療養に努めたり、あるいは医療機関に通ったりする場合、仕事を休まなければならない場合がありえます。
ここで有給休暇のような制度のことを考えなければ、仕事を休むことでその分、収入が少なくなります。
これがまさに「休業損失」です。
個人生活で考えた場合、身体の治療は何よりも大事なことですが、治療期間に稼げなくなってしまった収入もまた深刻な損失ではないでしょうか。
今回の主旨は「休業損害」に対する不安をいたずらに煽るものではありませんし、ましてや「利益保険」を宣伝するものでもありません。
ただ企業活動を取り巻くリスクには、ややもすると見えにくい「休業損害」リスクがあり、その対策として「保険」という方法もあるのだということを、お知らせできればと思ってのことです。
一度、思わぬ災害による「休業」リスクを想定して、その対策を考えてみては如何でしょうか。
(法人コンサルティング部 小鳥)