村上春樹氏は日本が誇る作家として良くも悪くも批評の的に晒される方ですね。最近出版された表記の本を読ませていただきました。経歴を調べてみると自分と近い部分が多々発見され親近感が湧いてきました。
例えば大学卒業後、ジャズ喫茶経営(私もジャズが大好きで聴くだけでなく、管楽器を吹いています)そしてその傍ら執筆活動に勤しみ、文壇に登場(全く似てません)。また、身体を鍛えるためにマラソンを続け(私も走るのが好きでマラソン大会などに参加)ついにはトライアスロンまで参加(ここまでは未到達です)等。
とはいえ作家というと何か自分の中では、ある種特別な職業なのではという思いがありまして。試験で合格するものでもなく(もちろん芥川賞他多数の文学賞はあります)、その文章・文体に制約があるものでもなく読者が評価して初めて職業として認めてもらえるような一種独特な風味を感じます。
同作品に目を移してみると、普通我々が描写する場合は経験談であったり他の情報からの焼き直しであったりする場合が多いのですが、彼の場合複雑な男女関係を絡めながらも非日常的な毎日を極めてクール(感情に匂いがなく透明な感じとでもいうのでしょうか)に描いている点に他の作家と違う趣が見られますね。
氏の他の作品と通じるところは、親切じゃない部分でしょうか。文章はとても丁寧で内容も平易なのですが物語の結末にあたりそれまで紡ぎあげてきたものを全てクリア(すっきりさせる)することなく、読後に立ち戻らせて読者に何かを考えさせようとするようなものでしょうか。
そんな思いに自分自身憤りながらも、また以前読んだ作品や読んだことのない作品にも手をつけてみようかなと思いを新たにさせるような自分も存在させられる。そんな作品でした。