改正労働基準法に係わる質疑応答、その4「時間単位年休」
厚生労働省労働基準局は、平成22年4月1日から施行される改正労働基準法に係わる質疑応答集を、ホームページに掲載しました。
第1回目の「時間外労働」に関する質疑応答、第2回目の「法定割増賃金率」に関する質疑応答、第3回目の「代替休暇」に関する質疑応答に続いて、第4回目は「時間単位年休」です。
- 法:労働基準法(昭和22年法律第49号)
- 限度基準:労働基準法第36条第1項の協定で定める労働時間の延長の限度等に関する基準(平成10年労働省告示第154号)
- 則:労働基準法施行規則(昭和22年厚生省令第23号)
4 時間単位年休(法第39条第4項及び第7項関係)
時間単位年休の管理の仕方
Q27
時間単位年休の管理の方法として、所定労働時間が8時間の事業場で時間単位年休を5日分と定めた場合において、1時間を取得した場合の残りは、
(1)4日と7時間
(2)39時間
のどちらで管理すべきか。
A27
時間単位年休を取得できる部分の日数であっても、日単位で取得するか時間単位で取得するかは請求時の労働者の意思によるものであるので、考え方としては(1)である。
1日の所定労働時間に1時間に満たない端数がある場合
Q28
時間単位年休について1日の所定労働時間の1時間に満たない時間数は時間単位に切り上げることとなるが、1日の所定労働時間が7.1時間の場合、5日分で35.5時間となるのでこれを36時間とし、40時間とする必要はないのではないか。
A28
年次有給休暇は日単位で付与され、取得することが原則であるので、1日分の年次有給休暇が何時間分の時間単位年休に相当するかを予め労使協定で定めることが必要とされる。
その際、労使協定で定める時間数は、1日の所定労働時間数を下回らないものとされていることから、1時間に満たない時間数については1時間に切り上げる必要がある。
したがって、設問の場合には1日の時間数を8時間とする必要があるため、5日分の合計は40時間となる。
労使協定がない場合等の時間単位年休の取得
Q29
たとえ使用者が容認していたとしても、労使協定のない、あるいは協定の限度を超える時間単位年休の取得については、法的な年次有給休暇の取得として扱われず、法定の年次有給休暇の日数の残数は変わらないと解してよいか。
A29
貴見のとおり。
年5日を超える時間単位年休の請求がある場合
Q30
前年度からの繰越時間分の時間単位年休があるという理由で繰越時間分を含めて5日を超える時間単位年休を労働者が請求した場合、使用者はこれを与えなければ違法となるか。
A30
次年度に繰り越される年次有給休暇の残日数に計算上時間単位年休の取得残が含まれるように見られる場合であっても、時間単位での年休の取得が可能なのは、当該次年度においては合計5日以内の範囲である。
その範囲を超える時間単位年休を労働者が請求した場合は、法に定める5日以内の範囲を超えており、法律上与えることができないため、5日を超えた年次有給休暇を使用者が与えないとしても違法とはならない。
なお、使用者が法定の付与日数を超える年次有給休暇を付与している場合には、当該部分について時間単位年休を与えることは可能である。
労使協定のない事業場へ異動した場合等
Q31
時間単位年休の労使協定が締結されている事業場から締結されていない事業場へ異動した場合や、当年度は労使協定が締結されたが次年度に労使協定が締結されなかった場合、時間単位で残っている年次有給休暇の取扱いはどうなるのか。
A31
労働者の年次有給休暇の権利が阻害されないよう、あらかじめ労使協定等においてこのような場合の取扱いについて定めておくことが望ましい。
1時間以外の時間の単位
Q32
1時間以外の時間を単位として時間単位年休を与えることとする場合について、例えば30分など、1時間未満の時間数を単位として与えることとすることは可能か。
A32
時間単位年休における取得の単位である時間とは、整数の時間数を指し、1時間に満たないものは含まれない。
1日の年次有給休暇を時間単位年休で取得することの可否
Q33
1日の年次有給休暇を取得する際には、原則として時間単位ではなく日単位により取得するものであることとされているが、日によって所定労働時間が異なる労働者で、所定労働時間が2時間と8時間を交互に繰り返すような場合は、時間単位年休の1日の時間数は5時間であるが、所定労働時間が2時間の日に1日の年次有給休暇を取得する場合、日単位ではなく時間単位で2時間の年次有給休暇を取得するという取扱いは可能か。
A33
時間単位年休は日単位による取得の例外として認められるものであり、1日の年次有給休暇を取得した場合には、原則として1日の年次有給休暇が取得されたものとして取り扱うこととなる。
しかしながら、設問のような場合に1日の年次有給休暇を時間単位で取得させたとしても、これを違法として取り扱うものではない。
1年の途中で所定労働時間数の変更があった場合
Q34
年の途中で所定労働時間数の変更があった場合、時間単位年休の時間数はどのように変わるのか。時間単位の端数が残っていた場合はどのようになるのか。
A34
時間単位年休として取得できる範囲のうち、1日に満たないため時間単位で保有している部分については、当該労働者の1日の所定労働時間の変動に比例して時間数が変更されることとなる。 例えば、所定労働時間が8時間から4時間に変更され、年休が3日と3時間残っている場合は、3日と3/8日残っていると考え、以下のとおりとなる。
【変更前】3日(1日当たりの時間数は8時間)と3時間
【変更後】3日(1日当たりの時間数は4時間)と2時間(比例して変更すると1.5時間となるが、1時間未満の端数は切り上げる)
半日年休との関係
Q35
半日年休を取得した場合の残時間数はどのようになるか。
A35
半日単位年休の運用については、事業場に委ねられているので、半日年休を取得した場合の残時間数を時間単位年休の運用上どのように扱うかは、法定を下回らない内容により労使で定めることとなる。
時間単位年休の時季変更権
Q36
時間単位年休に係る時季変更権については、例えば、9時~10時の1時間の請求が行われた場合、これを同一日の13時~14時へ変更し、又は翌日の9時~10時に変更することは可能か。
A36
設問の時季変更は可能である。ただし、使用者には他の日時を指定すべき義務はない。また、労働者には時季変更で指定された時季に時間単位年休を取得する義務が生じる訳ではないので、新たに他の時間に時間単位年休を取得するための指定をすることができる。
時間帯で金額が異なる場合
Q37
時間帯で金額が異なる時間給で勤務する労働者に係る時間単位の年休の賃金については、時間単位で年休を取得した時間帯の約定された時間給単価で計算することとなるのか。
A37
設問の場合、法第39条第7項(則第25条第2項及び第3項)により、平均賃金若しくは所定労働時間労働した場合に支払われる通常の賃金又は標準報酬日額に相当する金額をその日の所定労働時間数で除した金額を当該時間に応じて支払うこととなる。
なお、通常の賃金を選択した場合は通常の出勤をしたものとして取り扱えば足り、則第25条に定める計算をその都度行う必要はないことは従前のとおり。
質疑応答の全文は以下をご参照ください
改正労働基準法に係る質疑応答:厚生労働省