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改正労働基準法と就業規則、その1「時間外労働限度基準の見直し」

長時間労働を抑制し、労働者の健康確保や、仕事と生活の調和を図ることを目的とする「労働基準法の一部を改正する法律」(平成20年法律第89号)が、平成20年12月12日に公布され、平成22年4月1日から施行されます。

これから数回にわたって、改正労働基準法のポイントと就業規則の改定例をご紹介していきたいと思います。

第1回目は『「時間外労働の限度に関する基準」の見直し』です。

 

労働基準法で労働時間は1週40時間、1日8時間までと定められています。これを超えて法定時間外労働(以下「時間外労働」と言います。)を行わせるためには、労使協定『時間外労働協定(「36協定」)』を締結し、これを労働基準監督署に届け出る必要があります。

36協定では、(1)1日、(2)1日を超え3か月以内の期間、(3)1年間のそれぞれについて、延長することができる時間を労使で協定しなければなりません。このうち(2)、(3)の延長時間については「時間外労働の限度に関する基準」において、一定の限度時間が定められています(一部、適用除外あり) 。

期間 限度時間 限度時間()
1週間 15時間 14時間
2週間 27時間 25時間
4週間 43時間 40時間
1ヵ月 45時間 42時間
2ヵ月 81時間 75時間
3ヵ月 120時間 110時間
1年間 360時間 320時間

1年単位の変形労働時間制をとっている場合


臨時的に限度時間を超えて時間外労働を行わなければならない特別の事情が予想される場合には、「特別条項付き36協定」を結ぶことにより、限度時間を超える時間を延長時間とすることができます。

特別条項付き36協定では、

◇原則としての延長時間(限度時間以内の時間)
◇限度時間を超えて時間外労働を行わせなければならない特別の事情
◇一定期間途中で特別の事情が生じ、原則としての延長時間を延長する場合に労使がとる手続
◇限度時間を超える一定の時間
◇限度時間を超えることができる回数

を定める必要があります。

今回、「時間外労働の限度に関する基準」が改正され、労使で特別条項付き36協定を結ぶ際には、新たに、

1.限度時間を超えて働かせる一定の期間(1日を超え3か月以内の期間、1年間)ごとに、割増賃金率を定めること
2.1の率を法定割増賃金率(2割5分以上)を超える率とするよう努めること
3.そもそも延長することができる時間数を短くするよう努めること

が必要になります。


○ 特別条項付き36協定

例1
一定期間における延長時間は、1か月45時間、1年360時間とする。
ただし、通常の生産量を大幅に超える受注が集中し、特に納期がひっ迫したときは、労使の協議を経て、6回を限度として1か月60時間まで延長することができ、1年420時間まで延長することができる。
この場合の割増賃金率は、1か月45時間を超えた場合は30%、1年360時間を超えた場合は35%とする。

例2
一定期間における延長時間は、3か月120時間、1年360時間とする。
ただし、通常の生産量を大幅に超える受注が集中し、特に納期がひっ迫したときは、労使の協議を経て、2回を限度として3か月150時間まで延長することができ、1年400時間まで延長することができる。
この場合の割増賃金率は、3か月120時間を超えた場合又は1年360時間を超えた場合は40%とする。

注意!
上記特別条項付き36協定例は、いずれも、限度時間を超えた場合の割増賃金率を2割5分を超える定めをしていますが、これはあくまでも努力義務ですので、無理をして引き上げる必要はありません。


○ 就業規則(賃金規程)

特別条項付き36協定で割増賃金率を定めた場合には、労働基準法第89条第2号に定める「賃金の決定、計算及び支払の方法」に関するものなので、就業規則(賃金規程)にも新しい割増賃金率を規定する必要があります。

就業規則(賃金規程)規定例

例1
割増賃金率を、1か月45時間を超える時間外労働について35%、1年360時間を超える時間外労働について40%に設定している場合

(割増賃金)
第○○条 時間外労働に対する割増賃金は次の割増賃金率に基づき、次条の計算方法により支給する。
(1) 1か月の時間外労働時間数に応じた割増賃金率は、次のとおりとする。なお、この場合の1か月は毎月1日を起算日とする。

 時間外労働45時間以下25%
 時間外労働45時間超~60時間以下35%
 時間外労働60時間超50%
 三の時間外労働のうち代替休暇を取得した時間35%(残り15%の割増賃金分は代替休暇に充当)

(2) 1年間の時間外労働時間数が360時間を超えた部分については、40%とする。なお、この場合の1年は毎年4月1日を起算日とする。


例2
割増賃金率を、3か月120時間を超える時間外労働について30%、1年360時間を超える時間外労働について35%に設定している場合

(時間外労働に対する割増賃金率)
第○○条

(1) 時間外労働に対する割増賃金率は、次項の場合を除き、時間外労働時間数が1か月60時間以下の場合には25%とし、第○条に定める計算方法により割増賃金を支給することとする。
この場合、1か月の起算日は毎月1日とする。第3項において同じ。

(2) 限度時間を超える時間外労働に対する割増賃金率は、次のとおりとする。この場合、3か月の起算日は1・4・7・10月の1日とし、1年の起算日は毎年4月1日とする。
・3か月120時間を超える時間外労働に適用される割増賃金率30%
・1年360時間を超える時間外労働に適用される割増賃金率35%

(3) 前項の規定にかかわらず、時間外労働が1か月60時間を超える場合には割増賃金率を50%とする。(※)

 1か月60時間を超える時間外労働に係る割増賃金率は、限度時間を超える時間外労働の割増賃金率の定めにかかわらず50%以上とする必要があります。このことについても、就業規則に定めておく必要があります(中小企業は適用が猶予されます)。


限度基準の改正に関しては、以下をご参照ください。
労働基準法第三十六条第一項の協定で定める労働時間の延長の限度等に関する基準の一部を改正する件
(※限度基準告示の一部改正)(平成21年厚生労働省告示第316号)

条文(PDF:46KB)
新旧対照表(PDF:60KB)

今回は、以下のパンフレットを参考にしました。
改正労働基準法のあらまし

改正労働基準法全般に関しては、以下をご参照ください。
厚生労働省:労働基準法が改正されます(平成22年4月1日施行)


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