行政書士が「専門家」たる所以・・④
少し時間が空きましたが、前回の続きです。
許認可業務にあっては、極論、「競合する国家資格がない」というところからお伝えしたいと思います。
「いや、税理士だって、弁護士だって、行政書士登録をすれば手がけられる。
今後は、弁護士も増員されているので許認可を手がける」などと言う人がいるかもしれません。
現に、そう言っている方たちにお会いしたこともあります。
しかし、私が思うに、弁護士が本格的に許認可を手がけるようになるのは、まだまだ先のことになるだろうと考えています。というのは、弁護士の業務と許認可業務とは、全く異質のものだからです。
私は若い頃、法律事務所に勤務していましたが、その頃、裁判所に行けば、書記官との交渉で「法律上の根拠を示せ」とカウンター越しに詰め寄ったものです。
ただ、現在は、上記のようなことがないのかもしれませんが、その当時、なぜこんなことができたのかといえば・・・
民事訴訟法や刑事訴訟法など、裁判手続は、手続法によって、裁判官や書記官などの権限が明確に定められているからです。だから、「法令に根拠のない判断はできないはずだ!」と、「法令を根拠に交渉」していたというわけです。
ところが、法律事務所を退職して、行政書士になった途端、この交渉術が使えないことを悟りました。
私は、行政書士の先輩もいません。それに、許認可手続といっても、自分の車庫証明書を取りに行ったことがあるくらいで、ほとんど経験も知識もなく、行政書士になりました。
そのときに、まず感じたのが「交渉ができない」ということでした。
当時(約15年前)は、役所に行っても「行政書士が何しにきたの」という感じで、「本人はどうして来れないの」などと言われることもありました。
もっとも、当時から建設業許可や自動車関連手続の窓口では行政書士は認知されていましたが、ひどい場合には「そんなにいろいろ主張するとお客さんに迷惑がかかるんじゃないの!?」などと、「俺が許可するかどうかの権限をもっているんだぞ。俺の機嫌次第なんだぞ」と言わんばかりのことを言われたこともありました。
つまり、行政手続については、行政裁量の範囲が広いため「法令を根拠に交渉」できないと感じたのです。
この業務を進める上での感覚の違いは、実は大きなものなのです。
弁護士として教育を受け、業務を行っていた人が行政書士業務である許認可業務を手がけるのは、そう簡単ではありません。
弁護士の業界から行政書士の業界に入った私だからこそ、それがよくわかるのです。