介護人手不足 解決遠く
求職 年齢・技能で制約
「若い人の応募を期待していたんだけど・・・・」。昨年12月16日、横浜市のハローワーク横浜南であった就職フェア。求人側で参加した介護施設勤務の女性は重いため息をついた。
フェアは長妻昭厚生労働相の指示で、12月中旬の1週間、各地のハローワークで一斉に開催された。失業対策も兼ね、介護事業者と求職者を引き合わせる取り組みだ。
だがこの日、仕事を求めて集まったのは多くが高齢男性。夏に仕事を辞めたという50代後半の男性は「介護の資格を勉強中で、年明けには取得できる」と強調したが、女性は「最後は体力勝負。年齢面の制約がある」と残念そうに話した。
求職者にとっても、就業へのハードルは低くないようだ。両親の病気を機に仕事を辞め、職探し中の男性(38)は「人手不足と聞く介護分野ならと参加したが、要求される技能水準が思った以上に高かった」と肩を落とす。
現場 重労働、離職多く
介護従事者不足は深刻だ。介護労働安定センター(東京・文京)の2008年度調査では離職率は18.7%で、全産業平均の14.6%より高い。離職者の75.5%が3年未満で辞めており、賃金に満足している人も14.9%しかいなかった。
訪問介護などを手掛ける「セントケア磯子」(横浜市)の鹿内恵里子さんは「圧倒的に人が足りず、利用者のニーズに応じきれない。要望にすべて応えようとすれば瞬く間に過重労働になってしまう」と話す。半面、「{命を預かる責任が重い}{早朝勤務が多い}など、厳しい実情を知らずに就職しても続かない。誰でもいいから来てとはいえない」と胸の内は苦しい。
民主党は人材不足を待遇面から打開しようと、マニフェスト(政権公約)で介護従事者の「月収4万円増」を掲げた。ただ総額で年8千億円にも上る負担増を予算で計上し続けられるかなど、実現を疑問視する声も根強い。
横浜市の介護老人保健施設で事務長を務める藤原俊明さんは「いったん上げた賃金は下げられない。永続的な財源の裏打ちがないと不安」。介護の仕事を続ければ社会的立場も収入も上昇するという青写真を示せない現状のままだと「有能な若者を呼び込めない」と危機感を募らせる。
鹿内さんも「介護報酬増は利用者の自己負担増につながる。今でも支払いがギリギリの人が少なくなく、大幅に報酬を上げれば不払いが急増するのでは」と懐疑的だ。
キャンペーン最終日の12月19日、東京・霞が関の厚労省講堂で開いた面接会で、長妻厚労相は「介護職は人手不足で、職を求める人は多い。介護を立て直す絶好機」と強調した。
聞いていた都内の社会福祉法人の職員は「足りないところに余った人をただ当てはめてもダメ。社会全体で介護の重要性を再認識してほしい」とつぶやいた。
(日経新聞 -労働問題-)