熱中症労災なくせ
建設や製造業で多発
従業員の持病注意を
夏本番を前に熱中症による労災事故に歯止めをかけようと、厚生労働省は「職場における熱中症の予防対策マニュアル」をまとめた。炎天下で業務に従事する人に対して水分と塩分の摂取を励行してもらうほか、糖尿病など熱中症を起こしやすい持病がある人への健康管理の徹底などを雇用主らに要請している。関係団体などに配布して、後を絶たない熱中症労災の撲滅をめざす。
同省によると、熱中症による労災事故で毎年約20人が死亡し、4日以上休業する労働者も数百人に上る。同省労働衛生課は「対策をとれば防げる労災なのに犠牲者が後を絶たない」と話す。
2006~08年に発生した52人の死亡事故を分析した結果、業種別では建設業が33人(63%)と最も多く、製造業が8人(15%)で続いた。業務に就いてから7日以内に発症するケースが41人(79%)と大半を占め、体が熱に慣れていない時期が最も危険なことも判明。糖尿病や高血圧、心疾患、腎臓病などが影響した可能性があるケースも目立った。
分析をもとに同省はマニュアル作成委員会(委員長=桜井治彦・慶応大名誉教授)を設置して対策を検討。▽業務従事直後は熱に慣れる期間を計画的に持つ ▽持病がある労働者の健康管理を徹底する-などを対策のポイントとして定めた。
熱中症対策には気温だけではなく湿度も重要として、気温と湿度などから算出する「暑さ指数(WBGT)」に応じて、重労働を見合わせるなどの対策も盛り込んだ。同省は6月中に公表し、関係団体などに配布する。
▼熱中症
高温多湿な環境で、体内の水分、塩分のバランスが崩れるなどして生じる体調不良の総称。めまい・失神、大量の発汗、頭痛、吐き気、発熱などの症状が現れ、高齢者を中心に年間200~600人が死亡する。発症した場合は涼しい場所に移動し、水分、塩分を補給。水をかけたりぬれタオルを当てたりして体温を下げる。意識がなかったり、自力で水分摂取できなかったりする場合は医療機関を受診させる。(日経新聞 -労働問題-)
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