残業手当てを定額で支払うことはできないか?
Q:残業手当てを定額で支払うことはできないか?
A:定額で支払うためには①定額分が労基法第37条で定めた計算方法による割増賃金額を下回らないこと②そのため定額分を超える実績に対しては不足額を支払うこと、の2点が必要。したがって、割増賃金が定額であることを賃金規則に明示して周知し、毎月の実際の残業時間と定額残業分とを比較して不足している場合は差額を支払うという措置を講じる場合は可能。
Q:残業手当てを定額で支払うことはできないか?
A:定額で支払うためには①定額分が労基法第37条で定めた計算方法による割増賃金額を下回らないこと②そのため定額分を超える実績に対しては不足額を支払うこと、の2点が必要。したがって、割増賃金が定額であることを賃金規則に明示して周知し、毎月の実際の残業時間と定額残業分とを比較して不足している場合は差額を支払うという措置を講じる場合は可能。
Q:会社に勝手に残って仕事をしても残業になるか?
A:使用者(管理者)が黙認している場合は残業になる。残業は本来業務命令があって初めて行うものであるが、労働者が残業していることをやめさせることなくさせている場合は、「黙示の承認」があったと考えられ、「残業させていない」とは抗弁できない。
なお、労基法第121条第2項は「事業主が違反の計画を知りその防止に必要な措置を講じなかった場合、違反行為を知り、その是正に必要な措置を講じなかった場合又は違反を教唆した場合においては、事業主も行為者として罰する」として不作為そのものを犯罪行為としている。
Q:年俸制の労働者には残業手当は不要か?
A:年俸制であっても、時間外、休日労働時間に対する割増賃金は支払わなければならない。年俸制の賃金の中に、
①時間外・休日労働時間とそれに対応する割増賃金が明確にされていて、かつそのことを労使双方が認識していること。
②割増賃金相当部分とした賃金が法定の割増賃金以上であること
の場合は、労基法第37条違反にはならないが、そうでない場合は別途支払わなければならない。(大阪地版平14..10.25システムワークス事件)
なお、割増賃金の算定に当たって、年俸を毎月分の月給と賞与に分けて支払っている場合は年俸金額を12で除した金額をひと月の賃金として計算することになる。(平12.3.8基収第78号)
雇用調整助成金
失業率上昇の歯止めに
雇用調整助成金(中小企業に対しては中小企業緊急雇用安定助成金)は企業が不況などで事業縮小を余儀なくされたとき、従業員を休養及び教育訓練、出向させることで雇用を維持した場合に国から賃金や教育訓練費に対する助成金が支給される制度である。これまで条件が厳しい上に事務手続きも煩雑で、使い勝手のあまりよくない公的支援制度だったが、08年12月に支給要件を緩和して以降、申請企業が急増している。
09年3月に申請件数は約4万8千事業所と、前月の約1.6倍に急拡大した。08年度合計では約9万4千事業所、対象従業員数は約529万人に達している。だが、実際に支給決定されたのは約2万5千事業所、約25万人にとどまっており、審査・事務手続きの迅速化を求める声が強まっている。
助成内容も大幅に拡充された。限度日数は1年間で200日、3年間で300日に延長。助成率に関しては中小企業は賃金の3分の2から5分の4に引き上げられた。教育訓練費も一人一日1200円から6000円に増額され、賃金助成に上乗せされている。被保険者であった期間を問わず、被保険労働者全員が対象になるとともに、雇用期間が6ケ月以上という条件付で被保険者以外にも適用対象が拡大された。
雇用調整助成金は失業を避けるための支援策であると同時に、企業が優秀な人材を温存する効果もある。反面、事業を維持する体力のない企業を生き残らせ、産業構造の高度化を阻害するといった懸念もある。一律に助成金を支給し続けるだけでなく、企業の経営革新を支援する仕組みも必要となっている。(日経新聞 -労働問題-)
裁判員候補者はスタートあと8日
もともとニュースには関心があり、いろんな事件についてテレビやラジオで情報を入手してきました。でも一般庶民の自分が法律などの勉強もしていないのに、裁判員として事件にかかわることになるのは正直言って嫌です。
心配なのは裁判に参加する場合に数日間、続けて仕事を休まないといけないこと。もしかしたらクビになるのではないか、こんな不景気な時代に仕事がなくなったら、どうやって生活していけばいいのか・・・。国はそれを補償してくれるのでしょうか。
守秘義務もある。「しゃべるな」と言われたら他人にはしゃべりませんが、人から「自分にも話せないのか」と言われると、人間関係が崩れてしまいますよ。生活が壊れてしまう気がして本当に憂うつです。
仕事が忙しいだけでは拒否できない、というのもおかしくないですか。夜も寝られなくなるようなストレスを抱えるかもしれない。こんな制度、なくなってほしいです。(朝日新聞-労働問題)
Q:月の途中に役職手当を解いた場合、当月の役職手当の支払は必要か?
A:月給制であれば全額の支払が必要。ただし、就業規則で定めれば日割り計算は可能であるが、原則的には本人に不利にならないように行うべきである。何も定めていない場合は全額の支払が必要。
賃上げ率1.62%に
最終集計0.22ポイント減/大半ベア応じず
夏のボーナス中間集計と同時にまとめた二〇〇九年春の賃金交渉での賃上げ率(最終集計)は一.六二%と昨年に比べ〇.二二ポイント低下した。業績悪化で大半の企業がベースアップ(ベア)に応じなかった。電機各社では定期昇給を半年から一年間凍結するなどの動きも出ている。
回答した三百六十五社の平均基準内賃金は三十万八千百六円(三十七.三歳)。賃上げ額は五千七十四円で、昨年を六百七十六円下回った。
製造業の賃上げ率は一.七六%と前年を〇.一六ポイント下回った。賃上げ額は五千五百七十一円で、昨年より約五百円少なかった。機械や自動車・部品などで賃上げ抑制の動きが強まっている。
非製造業の賃上げ率は〇八年を〇.四七ポイント下回る一.一一%。定期昇給をゼロとした企業は製造業・非製造業合わせ二十四社(六.六%)。(日本経済新聞 -労働問題-)
未払い賃金 国の立て替え急増
08年度下期 37%増の167億円
勤め先が倒産して賃金を受け取れなかった人に、国が未払い賃金を立て替え払いする制度の利用が急増している。08年度下半期の立て替え請求額は、上半期より37%増えて167億円に達した。企業倒産が増えていることから、新年度も請求が膨らんでおり、厚生労働省は補正予算案に関係費用の増額を盛り込んだ。
この制度は、法的整理に入るなどした企業の働き手に、未払い賃金(ボーナスを除く)の8割、最高296万円を労災保険から支払う。
08年度通年では、支給者数が5万4422人、立て替え額は計248億円で、ともに前年度より6%増えた。1人あたりの平均額は45万6千円だった。業種別では、製造業が立て替え総額の24.6%(前年度22.7%)を占めて最も多く、続く建設業も22.1%(同17.6%)。企業規模別では、従業員300人未満の中小・零細企業が立て替え総額の92.5%を占めた。
厚労省は09年度当初予算で186億円を計上していたが、補正予算案で72億円を積み増した。立て替え総額は03年度以来6年ぶりに300億円を越す見込みだ。(朝日新聞 -労働問題-)
2009年5月号より抜粋
未払い残業代の支払い判決
小売・飲食以外にも「名ばかり管理職」問題広がる
ソフトウェア開発会社「東和システム」に対し、社員3人が残業代の支払いを求めて争った訴訟で、3月9日東京地裁は4,500万円の支払いを会社側に命じました。
いわゆる「名ばかり管理職」の問題が、小売業や飲食業などに留まらず、様々な業界に広まってきています。
労働基準法の解釈
「名ばかり管理職」とは、社内的には管理職と位置づけられていても、労働基準法上の管理監督者とは認められない者をいいます。
労働基準法が「監督・管理の地位にある者」に労働時間の規定の適用除外を定めているため、管理監督者には残業代を支払わないとする取り扱いが多くの会社でおこなわれています。
もともと労働基準法に対する行政解釈は、「職位の名称にとらわれず職務内容、責任と権限、勤務態様に着目して実態に即して判断する」と示されていましたが、具体的な判断基準があまりなく、トラブルが多発していました。
トラブル増加と行政の新判断基準
昨年1月、マクドナルドに残業代の支払いが命じられた東京地裁の判決(本件は控訴され今年3/18高裁で和解)を契機に、「名ばかり管理職」について多くの企業で見直しが進められることになりました。
昨年9月には、厚生労働省が「小売業、飲食業に対する管理監督者の判断基準」を通達し、対応に苦慮する会社へ一応の目安が与えられました。ただし、この基準は、マクドナルドのようなチェーン店の店長を想定しているため、他業種の管理監督者への判断基準は、まだまだ十分ではありません。
最新の判断基準
今回の東和システムの裁判は「課長代理」の職位にあったシステムエンジニアの男性3名が訴えていたもので、裁判官は、「残業代の支払い義務がない労働基準法の『管理監督者』に当たるかどうかの判断基準として(1)部門全体の統括的な立場(2)部下に対する労務管理上の決定権(3)管理職手当などの支給(4)自分の出退勤の決定権ーとの要件を提示」l(3月9日共同通信配信)しました。
自社においても管理監督者の定義見直しにあたって参考にできるものでしょう。
2009年4月号より抜粋
採用関連の助成金が大幅に新設・拡充
助成金を使って効率的な人材補充を
政府は様々な緊急雇用対策を打ち出しているところですが、失業した労働者への対策のみならず、企業の採用を促す施策も増えています。
100年に1度とも言われるこの不況をどう乗り切るかが企業の重大な課題となっていますが、中小企業や人手不足に苦心してきた業界では積極的に採用を進める企業も少なくありません。
採用を行う場合、緊急雇用対策として実施されている助成金の活用が人件費負担の軽減に役立ちます。本年2月6日から新設・拡充された助成金を見てみましょう。
派遣労働者の直接雇用
派遣として受け入れていた労働者を次の要件を満たして雇用した場合に支給される「派遣労働者雇用安定化特別奨励金」が新設されました。
①6ヵ月を超えて継続して受け入れていた業務に、派遣労働者を無期または6ヵ月以上の有期(更新有に限
る)で直接雇用する。
②派遣期間終了前に直接雇用する(終了日までに労働契約の申込みをした場合などであって、1ヵ月以内の
就業開始を含む)
年長フリーターの正規雇用
25歳以上40歳未満のフリーターなどを正規雇用する場合に支給される「若年者正規雇用化特別奨励金」が新設されました。これは、1年以上雇用保険に加入していなかった者や内定を取り消された新規学卒者をハローワークの紹介により正規雇用する場合に、大企業50万円、中小企業100万円の助成金が支給されるものです。
高齢者、障害者、母子家庭の母など
高齢者、障害者、母子家庭の母など就職が難しい一定の労働者をハローワークの紹介などにより雇入れた場合に支給される「特定求職者雇用開発助成金」のうち、中小企業に対する額が拡充されました。例えば、母子家庭の母を採用した場合の支給額は2期合計60万円から90万円になりました。
残業 製造業で49%減
3月の毎月勤労統計
下げ幅 過去最大に
厚生労働省は1日、3月の毎月勤労統計調査(速報、従業員5人以上)を発表した。製造業の残業時間は1人あたり8.8時間で前年同月比で49.5%減った。減少は12ヶ月連続で、下げ幅は過去最大。全産業は約2割減だった。給与の落ち込みも大きく、すべての給与を合わせた現金給与総額は全産業で1人あたり3.7%減の27万3561円。景気後退が労働時間と給与の縮小へつながっている。
残業時間を産業別にみると、製造業に次いで減少幅が大きいのは鉱業で41.7%減。海外の景気悪化による外需低迷が影響したもようだ。
現金給与総額を産業別にみると、飲食店・宿泊業の落ち込みが最大で前年同月比11.3%減(12万4078円)だった。(日経新聞 -労働問題-)
「新卒諸君、出社に及ばず」1023人
自宅待機や入社延期要求
今春、就職を予定していた大学生や高校生らのうち1023人が、内定先の企業から自宅待機や入社日の延期を求められていることが30日、厚生労働省のまとめで分かった。入社前に内定を取り消された学生らも2083人となり、過去最多を記録した。
厚労省は昨年11月から毎月、内定を取り消された学生らの数を調査してきた。だが入社日が近づくに連れ、内定取り消しをする代わりに、入社後に自宅待機などを命じるケースが目立ってきたため、全国のハローワークを通じ、4月23日現在で集計した。
その結果、入社したものの、その後に自宅待機を命じられた学生らは54社の755人だった。待機期間は1カ月以内が31人、1~3カ月が354人、3~6カ月が370人だった。自宅待機は事業主の判断で実施できるが、待機期間中も賃金の6割以上を支払う義務がある。
入社日の延期を求められたのは38社の268人。1カ月以内が103人、1~3カ月が102人、3~6カ月が55人で、6カ月以上も8人いた。延期には内定者との合意が必要で、同省の指針は「事業主は補償などの要求には誠意を持って対応すること」と定めている。
一方、08年度に内定を取り消されたのは2083人で、前月調査より238人増えた。(朝日新聞 -労働問題-)
Q:家族手当を廃止したいができるか?
A:家族手当は直接の労働に対する対価ではないこと、働かない配偶者の優遇策につながり女性の社会進出を阻害しているなどの理由から、特に配偶者に対する家族手当の廃止が増加してきている。ただし、突然の廃止は、一方的不利益変更になるので、ソフトランディングが必要。
製造業は人余り でも 医療福祉は人不足
中小企業白書、ミスマッチ指摘
経済産業省は24日、09年版「中小企業白書」を発表した。製造業や建設業で人手があまる一方、医療・福祉分野などで、人手が足りないと分析。大卒新人の就職に関しても、希望者と実際の求人にミスマッチがあるとし、「人材の橋渡しと支援が重要」と指摘している。
白書によると、中小企業5126社に業種別に今後3年間の人員見通しを聞いたところ、製造業は30%、建設業は20%の企業で、人員が「かなり過剰」「やや過剰」と回答した。一方で、医療・福祉では「かなり不足」「やや不足」が47%、飲食サービスでも39%にのぼり、業種間での人員の過不足の差が浮き彫りとなった。
また、従業員1千人以上の企業では、大卒新人に対する求人総数は近年、希望者の8割に満たないとのデータを提示。従業員1千人未満の企業では、求人総数は希望者の4倍以上あるとし「ミスマッチが生じている」とする。大企業が採用を抑制する中、「行政も後押しし、中小企業の魅力を伝えていくことが重要だ」とまとめている。(朝日新聞 -労働問題-)
財団法人21世紀職業財団(東京・文京)は企業向けにパワーハラスメント防止研修を始める。社員同士のいじめや嫌がらせなど職場環境を悪化させるパワハラ被害が企業で広がっている。講師を派遣して独自につくった専用テキストを使って社内研修を実施、パワハラ対策を支援する。
テキストは学識者や弁護士らの助言を得て製作した。パワハラはまだ法的な定義がないので、職場におけるパワハラの定義を明確にしたうえで、予防策や従業員から相談があった場合の対応などをまとめた。
(日経新聞 -労働問題-)