1か月単位・1年単位の変形労働時間制について
Q:1か月単位・1年単位の変形労働時間制を、就業規則に変更条項があることを根拠に、月の途中で変更することができるか?
A:例えば、ある日の所定労働時間が1日7時間労働となっているのを変更して8時間とする場合である。一般的には一旦決定している変形労働時間制を変更するには、就業規則に例外的、限定的事例を記載し、その場合にのみに許される他はできないと解されている。
Q:1か月単位・1年単位の変形労働時間制を、就業規則に変更条項があることを根拠に、月の途中で変更することができるか?
A:例えば、ある日の所定労働時間が1日7時間労働となっているのを変更して8時間とする場合である。一般的には一旦決定している変形労働時間制を変更するには、就業規則に例外的、限定的事例を記載し、その場合にのみに許される他はできないと解されている。
Q:振替休日と代休の相違は?
A:振替休日と代休の違いは、振替休日は所定休日を他の日に振り替える(変更する)ことで、代休は休日労働に対して恩恵的に与える休暇(勤務の免除)である。振替休日の場合、同一週内で振り替えた場合は問題ない。また、4週以内であれば労基法第35条の問題は発生しない。
ただし、他の週に振り替えたためその週の労働時間が週40時間を超えた場合は、その超えた部分は時間外労働になる。
Q:年次有給休暇の計画付与とは?
A:年次有給休暇(以下、年休)は労働者が自由に時季を指定して休みをとることができる制度です。しかし実際には、経営者の年休本来の意義・目的に対する理解の不十分さ、年休をとらないのが当たり前みたいな意識の存在、また労働者における同僚や上司への気遣い、年休の目的・付与日数についての自覚の欠如などが年休取得への妨げとなっているのが現状です。
そこで、労使協定により、有給休暇を与える時季に関する定めをし、それによって年休を計画的に付与することができるようになっています。ただし、各労働者の持つ休暇日数(前年度の繰越分を含む)のうち5日を超える分のみがこの規定の適用を受けます。(労基法第39条第5項)
例えば年休未消化分が20日あったとします。このうち、5日を超える部分である15日は、労使協定の定めにより、使用者は時季を決めて計画的に付与することができるとするものです。残りの5日は労働者が自由に時季を指定できます。この方法ですと、事業場全体として休業日を定めて一斉に付与することができます。
しかし、個人的に時季を指定してとりたい人にとっては、休みたくないときに年休を消化させられてしまうなど、心情的に面白くないことがあるかもしれません。欧米では年休の消化率は100%近くなっていますが、日本ではほぼ50%。年休消化のための苦肉の策といえますので、もしこういう制度があれば賛同していただきたいと思います。
また、年休を一斉に付与すると、残りが5日未満になってしまう人がいる可能性があります。この場合でも、自由取得部分の5日は保証されなければなりません。そのために、不足してしまう人には、年休を増加して与えるなどに配慮が必要です。
Q:従業員の私有車を会社の業務で使用させているので、ガソリン代を補助しているが、賃金になるか?
A:使用者の業務私用に伴うガソリン代や保険料、維持費については、実費弁償と考えられる。「車輌管理規定」を作成して、実費弁償となるよう支給基準を明確にすることが重要。走行距離等に無関係に一律に定めているような場合は賃金になる場合があるので注意。尚、補足ではあるが、個人所有の携帯電話を仕事で使用する場合についても、実費弁償となるよう、例えば毎月の利用明細を提出させるなどして支給基準を設定することが重要である。一律の金額で支払っている場合は、賃金になる場合がある。(賃金に該当する場合は、割増賃金の計算の基礎賃金になる。)
Q:降格処分に伴う賃金低下は違法か?人事権による降格というのはできるか?
A:懲戒処分としての降格に伴う賃金低下は合法。なお、人事権の行使としての降格も合法であるが、発令の際人事権によるものである旨を明らかにしておく方がよい。(東京地裁判決 平成13年8月31日アメリカンスクール事件。出入りの業者から謝礼を受け取っていたことと部下の管理監督能力を理由として施設管理部長からその2段階下のアシスタントマネージャーへの降格処分について、処分の程度も相当であり、人事権の行使として認められた例)
Q:社内でセクハラがあった場合、会社も損害賠償をしなければならないか?
A:男女雇用機会均等法第21条(改正法第11条・平成19年4月1日施行)ではセクハラに起因する問題において雇用管理上配慮することを義務づけており、また、厚生労働大臣は事業主の配慮すべき事項として、事業主の方針の明確化と周知・啓発、苦情相談窓口の設置、事案が生じた場合の迅速・適切な対応などを定めている。したがって、これらを適切に実施していないと義務違反に問われ損害賠償もあり得る。
Q:完全週休2日制(1日8時間労働、土・日曜日休日)の会社で、水曜に年休を取得した労働者が土曜日に労働した場合、割増賃金は必要か?
A:割増賃金は1日8時間、1週40時間を超えたら労働に対して支払わなければならないのであるから、その週において実労働時間が40時間以内であれば労基法第37条の割増賃金の支払いは不要である。ただし、「土・日曜日出勤したときは、全て割増賃金を支払う」という規定になっている場合は支払い義務があるが、これは労基法第24条(全額払い)により支払い義務が生じるのであって、労基法第37条の問題ではない。
Q:物損事故等における損害賠償額について
物損事故等における損害賠償額について、実損害額×一定率(限度額あり)は違法か?
A:運送会社やタクシー会社などで、「実損害額×一定率=求償金額(ただし、限度額あり。)」としている場合がある。「損害賠償額の最高限又は最低限として定めたことが明白であり、これを証明できる場合は、損害賠償の予定とは解されない」(労働省労働基準局編「労働基準法」上211頁)とされていることから、違法とはいえない。
雇用保険法等の一部を改正する法律案の概要
現下の厳しい雇用失業情勢を踏まえ、非正規労働者に対するセーフティネット機能及び離職者に対する再就職支援機能の強化を重点に、所要の法改正を行う
1.非正規労働者に対するセーフティネットの機能の強化
労働契約が更新されなかったため離職した有期契約労働者について(特定理由離職者)
○ 受給資格要件を緩和:被保険者期間 12か月→6か月(雇用等の離職者と同様の扱い)
◎ 給付日数を解雇等による離職者並に充実
〔 ○ 雇用保険の適用基準である「1年以上雇用見込み」を「6か月以上雇用見込み」に緩和し、適用範囲を拡 大〕
2.再就職が困難な場合の支援の強化
◎ 解雇や労働契約が更新されなかったことによる離職者について、年齢や地域を踏まえ、特に再就職が困難な場合に、給付日数を60日分延長(例えば所定給付日数が90日の場合→150日)
3.安定した再就職へのインセンティブ強化
◎ 早期に再就職した場合に支給される「再就職手当」の支給要件緩和・給付率の引上げ
(給付率について、30%→40%又は50%)
◎ 就職困難者(障害者等)が安定した職業に就いた場合に支給される「常用就職支度手当」について対象範 囲を拡大(年長フリーター層を追加)・給付率の引き上げ(30%→40%)
4.育児休業給付の見直し
○ 平成22年3月末まで給付率を引き上げている暫定措置(40%→50%)を当分の間延長
○ 休業中と復帰後に分けて支給している給付を統合し、全額を休業期間中に支給
5.雇用保険料率の引下げ
○ 失業等給付に係る雇用保険料率(労使折半)を平成21年度に限り、0.4%引下げ(1.2%→0.8%)
( ◎は3年間の暫定措置 )
施行期日:平成21年4月1日(育児休業給付の見直しについては平成22年4月1日)
※船員保険法についても、雇用保険法に準じた改正を行う。 ( -労働問題- )
失職社員の再就職支援
人員削減企業と契約
リクルートキャリアコンサルティング(東京・港)など人材サービス各社が再就職支援事業を拡大する。製造現場の社員などを削減するメーカーと契約し、失職する社員が再就職するための研修やカウンセリングを提供する。企業の急激な人員削減が社会問題化する中、こうしたサービスを活用する企業が増えている。
リクルートキャリアコンサルティングは2009年度中に、全都道府県で再就職支援サービスを提供する体制を整える。現在、拠点がない十県に進出する。08年度には拠点を20ヵ所増やし、71ヵ所にした。各拠点は地域の企業や事業所をくまなく回り、求人を開拓する。
再就職支援を得意とするメイテックグループの日本ドレーク・ビーム・モリン(東京・品川)は担当コンサルタントを中心に現在約90人の従業員を百-百十人に増やす。パソナグループ子会社のパソナキャリア(東京・千代田)は人材紹介部門から60人を再就職支援事業に移籍させた。4月からは契約社員向けの再就職支援事業を始める。(日経新聞 -労働問題-)
-厚生省方針ー年金支給に合わせ-
厚生労働省は2010年度をめどに、希望者全員が65歳まで働ける企業の割合を50%に引き上げる方針を決めた。公的年金の支給開始年齢が段階的に65歳まで引き上げられることを踏まえ、奨励金や助成金を活用して企業に高齢者の雇用機会を確保するよう働きかける。
厚労省が策定する「高年齢者等職業安定対策基本方針」に盛り込み、4月1日に公布する。希望者全員が65歳まで働ける企業の割合は08年6月1日時点で39%。 これまで目標は無かったが具体的な数値を示す。70歳まで働ける企業の割合を10年度をめどに20%に引き上げることも明記する。
厚労省が対応を急ぐのは、06年に施行された改正高年齢者雇用安定法が13年度までに65歳までの雇用確保を企業に義務づけているため。企業は定年の廃止や引き上げ、再雇用のいずれかで対応する必要があるが、国の支援をテコにそうした取り組みを促す。
厚労省は4月から複数の支援策を用意。1つが「定年引き上げ奨励金」の拡充。定年を65歳以上70歳未満に引き上げた企業に40万円~80万円を支給する仕組みだったが、柔軟な勤務時間制を導入した企業には一律20万円を追加する。
また、「高年齢者雇用モデル企業助成金」を導入する。65歳以上の高齢者を外部から新たに雇い入れる取り組みなどをモデル事業として認定し、事業経費の2分の1相当分(上限500万円)を支給する。(日経新聞 -労働問題-)
リクルートの就職情報サイト編集者だった石井偉さん(当時29)が96年8月にくも膜下出血で死亡したのは過労が原因だとして、両親が労災保険法による遺族補償などの不支給処分の取り消しを国に求めた訴訟で、東京地裁(白石哲裁判長)は25日、両親の訴えを認める判決を言い渡した。
死亡前に夏休みをはさむなどしたため、死亡半年前からの残業時間の月平均が国の認定基準に達していない今回のケースが過労死と認められるかが争点だった。
判決は、同社ではタイムカード上の労働時間を会社側が後で書き入れるなどの方法で、総労働時間を上限時間ちょうどに合わせるなどの過少申告が行われていたと認定。石井さんの同年4月以降の労働時間に月5時間を加算したうえで、石井さんの業務は特に過重だったと判断。「過重な業務により持病が急激に悪化して発症したとみるげきだ」として、死亡との間に因果関係があったと認めた。
遺族と同社との民事訴訟はすでに和解が成立している。同社は「改めて個人のご冥福を心よりお祈り申し上げる」とのコメントを出した。(21.3.26 朝日新聞 -労働問題-)
月給、10年ぶり30万円割れ
フルタイムで働く人の08年の平均月給(残業代除く)は前年比0.7%減の29万9千円(平均40.9歳)で3年連続で減少したことが、厚生労働省の賃金構造基本統計調査でわかった。30万円を切ったのは10年ぶり。賃金が高い団塊世代の退職が始まったことと、中高年の賃金水準を抑える動きが進んでいることが要因とみられるという。
平均月給は男性が同0.9%減の33万3千円、女性が同0.4%増の22万6千円。学歴別では男性は大学・大学院卒が1.9%減の39万9千円、高卒が同0.9%減の29万7千円。雇用形態別では正社員が同0.5%減の31万6千円、非正社員が同1%増の19万4千円。厚労省は「大企業の男性社員など、もともと賃金が高い層ほど、下落幅が大きい」という。調査は従業員10人以上の約4万5千事業所について、昨年6月分の給与をまとめた。(21.3.26 朝日新聞 -労働問題-)
ワークシェア奨励制度原案
「日本型ワークシェアリング」を促進するために厚生労働省が創設する支援制度の原案が24日わかった。残業時間を2分の1以下に減らし、非正社員の解雇や雇い止めを回避した企業に、1人あたり20万~45万円を支給する。25日の労働政策審議会(厚労省の諮問機関)の分科会に、雇用保険法施行規則の改正案を示し、31日から施行する。
新制度は「残業削減雇用維持奨励金」(仮称)。国が企業に従業員の休業手当を助成する「雇用調整助成金」のなかに新たな枠組みを作る。急速な雇用悪化への緊急対策で、3年程度の時限措置とする。
奨励金の対象は、生産量や売上高が直前または前年同期比で5%以上減っている企業など。雇用を維持した期間社員や契約社員1人あたり年30万円(大企業は20万円)、派遣社員は45万円(同30万円)を各100人を上限に支給する。
従来の雇用調整助成金についても、雇用保険加入者を解雇しない事業主には、休業手当に対する助成率を、大企業は現在の3分の2から4分の3に、中小企業は8割から9割に引き上げる。
(21.3.25 朝日新聞 -労働問題-)
2009年3月号より抜粋
パートにも解雇予告手当が必要?
Q.昨今の不況の影響で受注が減少しているためパートを数名解雇しようと思います。
正社員ではないので解雇予告手当の支払いなどは必要ありませんよね?
A.パート社員であっても労働基準法が適用されることにかわりはありません。解雇にあたっては30日前に解雇予告を行うか、30日分以上の解雇予告手当の支払いが必要です。
解雇は会社が一方的に社員の仕事を奪うものですから、社員の生活に与える影響は測り知れません。解雇を行う場合は、法律に定められた解雇手続きに従わなければなりません。これはパート社員、外国人労働者を問わずすべての社員に適用されます(2ヶ月以内の短期契約などを除く)。
30日前に解雇の予告をする
30日以上前に解雇の予告をすることが必要です。解雇の予告は口頭でもよいのですが、後々トラブルにならないよう「解雇予告通知書」を作成し、解雇日、解雇事由等を記載したほうがよいでしょう。
30日分の解雇予告手当を払う
解雇予告を行わずに即時解雇する場合には、平均賃金の30日分以上の解雇予告手当を支払わなければなりません。予告日から解雇日まで30日ない場合には、不足日数分の解雇予告手当を支払う必要があります。
解雇予告手当の計算方法
解雇予告手当は次の式で求めます。
平均賃金×(30-解雇予告期間)
まず、平均賃金の算出からです。平均賃金は、算出すべき理由が発生した日以前3ヶ月間に支払われた賃金の総額を、その期間の暦日数で割って求めます(原則)。賃金締切日がある場合は、直前の賃金締切日以前3ヶ月間で計算します。
最低保障額がある
しかし、パートなど賃金が時給や日給で定められ、月の就労日数が少ない場合は、平均賃金が低くなってしまいます。そこで、このようなケースでは「賃金総額をその期間中の労働日数で割った額の6割」という最低保障額が定められており、原則と比較して高い方の金額を使用します。
契約期間途中の解雇は要注意
ここまでの説明は、解雇できることを前提にしてきましたが、当然、解雇に正当な理由があるかどうか慎重な検討が求められます。
業務の減少などにより人員整理を行う際は、終身雇用を前提とする正社員より、臨時雇用であるパートを先にするべきだと過去の判例でも示されています。
ただし、一般的な有期契約のパートを契約期間の途中で解雇するには「やむを得ない理由」が必要と民法で定められています。あまり世間に周知されていないために、違法な解雇が多いのも事実ですが、不況により経営が悪化したとしても、できる限り即時解雇は避け、期間満了まで雇用したうえでの雇い止めを優先するべきでしょう。