配置転換・転勤命令が無効となる場合ってあるの?
原則的には、勤務地限定採用、職種限定採用でない限り、
配置転換や転勤命令は有効となります。
ただ、次の場合は、配置転換や転勤命令権の濫用とされ、
その命令は無効とされます。
1 業務上の必要性がない
一番イメージがしやすいのは、退職を促すための嫌がらせとしての
配置転換・転勤命令です。
2 合理的理由がない
例えば、退職勧奨を拒絶したことへの報復措置としての命令や、
結婚・出産を理由としてなされた命令です。
(昭和47年8月24日 横浜地裁判決 東洋鋼鈑事件)
3 労働条件が著しく低下する
配置転換や転勤命令によって給与額が
日常生活に影響を与えるほどに減額となる場合等が該当します。
(昭和34年3月14日 和歌山地裁判決 和歌山パイル織物事件)
4 職種・勤務場所について合理的な予想範囲を著しく超える
入社時の労働契約を締結した際の事情、これまでの社内慣行、
配置転換による新旧職務間の差等を総合的に判断して、
合理的な予想範囲を超えている場合が該当します。
(昭和48年12月18日 大阪地裁判決 名村造船所事件)
5 技術・技能等の著しい低下となる
特に技術系、職人系の従業員については、
それらの技術・技能の成長を著しく阻害するような
職種の変更等は配置転換権の濫用とされます。
(昭和47年10月23日 名古屋地裁判決 三井東圧化学事件)
6 私生活に著しい不利益が生じる
原則としては、私生活は会社がよくも悪くも立ち入ることではありませんので、
配置転換や転勤によって私生活が不便になる・不利益を被ると
従業員が主張しても、それを理由に
配置転換・転勤命令権が無効になるわけではありません。
ただし、これらの不便さ・不利益さが通常予想される範囲を超えて、
極めて著しいレベルである場合は、正当な拒否理由となるとされています。
(昭和43年8月31日 東京地裁判決 日本電気事件)
7 不当労働行為に該当する
労働組合法第7条第1号・第3号違反となります。
8 思想・信条その他差別待遇に当たる
労働基準法第3条違反となります。
大半の項目に共通して言えるのは
「著しい」ってどのくらい?という疑問です。
会社と従業員間でトラブルになると、こうした点が争点となり、
裁判で決着をつけるということになります。
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