解雇が制限される場合とは?
民法において規定されている雇用契約(労働契約)は
当事者である会社側と従業員側のの交渉力や社会的地位が対等であることを前提としています。
ところが、実態としては、会社側の方が従業員側よりも強い立場にあるのが通常です。
そこで、現代社会においては労働契約法、労働基準法等の労働法や
判例法理によって、従業員側を厚く守るように全面的に修正されています。
まず、大原則です。
★期間の定めのない雇用契約
解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、
社会通念上相当であると認められない場合は、
その権利を濫用したものとして、無効となります。
★期間の定めのある雇用契約(有期雇用契約)
やむを得ない事由がある場合でなければ、
雇用契約期間中に解雇することができません。
さらに、解雇が具体的に禁止されている主な場合として、次のものがあります。
1 業務上災害のため療養中の期間とその後の30日間の解雇(労働基準法19条1項)
2 産前産後の休業期間とその後の30日間の解雇(労働基準法19条1項)
3 労働基準監督署に申告したことを理由とする解雇(労働基準法104条2項)
4 労働組合の組合員であること等を理由とする解雇(労働組合法7条)
5 労働者の性別を理由とする解雇(男女雇用機会均等法6条)
6 女性労働者が結婚・妊娠・出産・産前産後の休業をしたことを理由とする解雇
(男女雇用機会均等法9条)
7 労働者が育児・介護休業を申し出たこと、
または育児・介護休業をしたことを理由とする解雇(育児・介護休業法10条、16条)
8 公益通報をしたことを理由とする解雇(公益通報者保護法3条)
ただし、上記1及び2については、次の場合に解雇制限を外すことができます。
1 業務上の傷病により使用者から補償を受ける労働者が、
療養を開始して3年を経過してもその傷病が治らない場合、
平均賃金の1200日分の打切補償(労働基準法81条)を支払えば解雇制限が外れます。
★ケガ等の症状が回復して職場に復帰し、
通院により治療している期間は解雇制限の対象とはなりません。
療養のために休業している(会社を休んでいる)期間が対象になります。
★解雇制限の対象になるのは、仕事が原因によるケガや病気に限られます。
プライベートでのケガや病気は該当しません。
★通勤途上によるケガ等も解雇制限の対象とはなりません。
2 天災事変その他やむをえない事由が生じて、事業の継続が不可能になった場合、
労働基準監督署長の認定を得ることができれば、解雇制限が外れます。