給料(給与、賃金)を銀行に振り込みすることは通貨払いの原則に違反しているのか?
給料や残業代などの賃金は通貨で支払うことが原則です(労働基準法第24条)。
通貨で支払うということは、現金で支払うということです。
昔の映画を見ると、給料日に経理の人が一人一人の差引支給額を給料袋に入れ、
上司や社長さんが「今月もお疲れ様!」と、
現金の入った給料袋を渡すシーンがあります。
労働基準法の世界では、こういったことが今でも原則なんです。
一方、21世紀の現代、こうした賃金は、
大半の企業では、金融機関への振込によって支払われています。
銀行振込というのは、法的に言うと、
「従業員が金融機関に対して預金を引き下ろす債権を取得した」
ということです。
現金を支給されたことにはならないのです。
しかし、現代では電気やガス料金、電話代、学習塾の授業料等、
様々なものが口座から引き落としされる世の中になっており、
銀行預金は生活と切り離せないものになっています。
また、現金でもらうよりも銀行振込の方がお金の管理がしやすいですよね。
さらに、経理の人も、給料を渡された人も
多額の現金を持ち歩く必要がなくなるので、安全性が高いのです。
したがって、振込が通貨払いの原則に違反していると考えるのは、
現実的ではなくなっているのです。
そこで、従業員の同意がある場合には、
従業員が指定する金融機関の口座への振込の方法によって
賃金を支払うことも許されるとされています(労働基準法第7条の2第1項)。
また、通常の預金口座以外にも、証券口座(MRF)に
振り込むことも許されるとされています(同条第2項)。
なお、この場合の「同意」は
従業員の意思に基づくものである限り、
その形式は問いません。
また、「指定」とは、
従業員が賃金の振込対象として金融機関に対する
従業員本人名義の預貯金口座を指定するという意味であり、
この指定が行われていれば、特段の事情がない限り、
従業員の同意を得たと考えてよいとされています。
(昭和63年1月1日 基発1号)
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