業務中の事故でケガをした社員の通院時間は労働時間か?
業務中に発生した事故が元でケガをした社員が、
勤務時間中に通院をする場合、病院への移動時間や診察時間は労働時間となるのでしょうか。
労働時間とは、一般的には使用者の指揮監督の下にあることを意味しており、
必ずしも実際に働いているかどうかは問われません。
例えば、トラックの運転手が荷物の到着を待ってトラック内で待機している場合や、
トラック内で運転手が二人いて、助手席に座っている人が休息していたり、
仮眠をとっている場合等は「手待ち時間」と言い、労働時間の一種とされています。
手待ち時間と休憩時間。似たような概念ですが、その違いは下記の通りです。
手待ち時間:使用者の指揮監督の下にある(従業員に時間の自由利用が保障されていない)
休憩時間:使用者の指揮監督の下にない(従業員に時間の自由利用が保障されている)
「休憩時間とは単に作業に従事していない手待ち時間を含まず、
労働者が権利として労働から離れることを保証されている時間の意であって、
その他の拘束時間は労働時間として取り扱う」
という通達も出ています。(昭和22年9月13日 発基第17号)
冒頭の質問について検討しますと、業務中に起きたケガ(労災)という点がポイントです。
これがプライベートのケガであれば、私用外出の一環ですから、
当然労働時間に含める必要はありません。
業務中のケガの場合は、どのように考えるかと申しますと、
実は、プライベートのケガと同じです。
業務上の災害(労災)に対し、どのような補償をするかという問題と、
業務上の災害のための通院時間を労働時間に含めるかどうかは別問題です。
業務上の災害のための通院時間は、使用者の指揮監督の下にあるとは言えませんし、
従業員に時間の自由利用が保障されているのでしょうから、
これは手待ち時間ではなく、休憩時間です。
したがって、労働時間に含める必要はありません。
なお、労働基準法は最低限の基準を定めた法律です。
業務上の災害のための通院時間を労働したものとみなして賃金を支払うというのは、
法を上回る措置となりますので、問題ありません。□■□□■■□□□■■■□□□□■■■■□□□□□■■■■■□□□□□□■■■■■