専門業務型裁量労働制の概要は?
【専門業務型裁量労働制とは?】
業務の性質上、業務遂行の手段や方法、時間配分等を
大幅に従業員の裁量に委ねる必要があるため、
その業務を行う手段や時間配分の決定などについて
会社や上司が具体的な指示をすることが難しい業務がありませんか?
専門業務型裁量労働制は、こうした業務として
厚生労働省令などにより定められた19業務の中から、
対象となる業務や1日当たりの時間数などを労使協定で定め、
従業員を実際にその業務に就かせた場合、
労使協定であらかじめ定めた時間働いたものとみなす制度です。
【専門業務型裁量労働制の対象業務とは?】
専門業務型裁量労働制を採用することができるのは、
以下の19業務です。(以下、「対象業務」といいます。)
各対象業務をクリックすると、
対象業務の範囲についての詳細が表示されます。
10 証券アナリストの業務
13 公認会計士の業務
14 弁護士の業務
16 不動産鑑定士の業務
17 弁理士の業務
18 税理士の業務
19 中小企業診断士の業務
【導入要件は?】
制度の導入にあたっては、
次の1~7の事項を労使協定で定めた上で、
導入する事業場ごとに様式第13号(下記のPDF)により、
所轄労働基準監督署長に届け出ることが必要です。
なお、労使協定は従業員に周知しなければいけません。
1 対象業務(法令で定める19種類の対象業務に限る)
2 みなし時間(対象業務に従事する従業員の労働時間として算定される時間)
3 対象業務を遂行する手段、方法、時間配分等に関し、
対象業務に従事する従業員に具体的な指示をしないこと
4 対象となる従業員の労働時間の状況に応じて実施する
健康・福祉を確保するための措置の具体的内容
5 対象となる従業員からの苦情の処理のため実施する措置の具体的内容
6 有効期間(3年以内とすることが望ましい)
7 4および5に関し従業員ごとに講じた措置の記録を
協定の有効期間中及びその期間の満了後3年間保存すること
8 時間外労働・休日労働・深夜労働
(この事項は協定締結上任意事項ですが、
専門業務型裁量労働制を適用する従業員に対して
就業規則における一般従業員との定めと異なっており就業規則で定めない場合は、
就業規則により協定に委任して協定により定める必要があります。)
【みなし時間】
労使協定には、対象業務の遂行に必要とされる時間を
1日当たりの労働時間として定める必要があり、
1日以外の期間、例えば1か月の労働時間として定めることはできません。
労使協定で定めた時間、すなわち、みなし労働時間は
労働基準法第4章の労働時間に関する規定の適用にかかる
労働時間の算定についてのみ適用されることになります。
また、労働基準法第6章の年少者及び労働基準法第6章の2の女性の規定に関する
規定における労働時間の算定には適用されません。
例えば、労働基準法第66条の規定により、
妊産婦の請求があった場合は、
実際の労働時間が1日8時間及び1週40時間を
超えないように労働させなければなりません。
よって、みなし労働時間制が適用される場合であっても、
休憩、深夜業、休日、年次有給休暇などの規定は排除されません。
【健康・福祉の確保措置の具体的内容】
健康・福祉確保措置の内容については、企画業務型裁量労働制における
措置の内容と同等のものとすることが望ましいとされています。
企画業務型裁量労働制における措置の内容は以下の通りです。
会社は、対象労働者の健康及び福祉を確保するため、
下記の2点について決議する必要があります。
1 対象従業員の勤務状況を把握する方法を具体的に定めること
2 把握した勤務状況に応じ、どういう状況の対象従業員に対し、
いかなる健康・福祉確保措置をどのように講ずるかを明確にすること
勤務状況の把握方法については、
通常の労働時間管理と同様の管理までは求められていませんが、
出退勤時刻のチェック等によって、
従業員がいかなる時間帯にどの程度の時間在社していたのかの
状況を把握する方法で明確に定めることが必要です。
<健康・福祉確保措置の例>
1 把握した対象従業員の勤務状況及びその健康状態に応じて、
代償休日または特別な休暇を付与すること
2 把握した対象従業員の勤務状況及びその健康状態に応じて、
健康診断を実施すること
3 働き過ぎ防止の観点から、年次有給休暇について
まとまった日数連続して取得することを含めてその取得を促進すること
4 心と体の健康問題についての相談窓口を設置すること
5 働きすぎによる健康障害防止の観点から、
必要に応じて、産業医等による助言・指導を受け、
または対象従業員に産業医等による保健指導を受けさせること
6 把握した対象従業員の勤務状況及びその健康状態に配慮し、
必要な場合には適切な部署に配置転換をすること
また、上記と合わせて次の事項についても決議することが望まれます。
1 会社が対象となる従業員の勤務状況を把握する際、併せて健康状況を把握すること
2 会社が把握した対象従業員の勤務状況及びその健康状態に応じて、
対象従業員への企画業務型裁量労働制の適用について必要な見直しを行うこと
3 会社が対象となる従業員の自己啓発のための特別の休暇の付与等
能力開発を促進する措置を講ずること
【従業員からの苦情処理のため実施する措置の具体的内容】
苦情処理措置の内容については、企画業務型裁量労働制における
措置の内容と同等のものとすることが望ましいとされています。
企画業務型裁量労働制における措置の内容は以下の通りです。
申し出の窓口、取り扱う苦情の範囲等、措置の具体的内容を
決議で定めることが求められています。
業績評価制度や目標管理制度、
これに基づく報酬制度などが導入されている場合には、
評価制度や報酬制度に付随する苦情が多く寄せられることが予想されます。
そこで、これらに関する苦情についても、
苦情処理の対象に含めるように措置することが適当であると
行政では指導をしています。
既に企業内に苦情処理システムをお持ちの企業については、
例えば、そのようなシステムで裁量労働制に関する苦情処理を
合わせて行うことを対象従業員に周知するというように、
実態に応じて機能するよう配慮することが求められます。
【記録の保存】
次の事項の記録については、労使協定の有効期間中と
有効期間満了後3年間保存しなければならず、
このことを労使協定に定めておく必要があります。
1 対象従業員の労働時間の状況
2 対象従業員の健康・福祉確保措置の状況
3 対象従業員からの苦情処理措置の状況
【時間外労働】
みなし労働時間が法定労働時間を超える場合には時間外労働になります。
したがって、「三六協定」を締結し、届け出た上で、
法定労働時間を超えた部分の時間に対しては
2割5分増以上の割増賃金を支払わなければなりません。
【休日労働】
みなし労働時間制が適用になる場合でも、
労働基準法第35条の休日の規定は適用されます。
したがって、「三六協定」を締結し、届け出た上で、
法定休日に働いた場合には労働基準法第37条第1項により、
実際の労働時間に応じた3割5分増以上の
割増賃金を支払わなければなりません。
【深夜労働】
午後10時から翌朝午前5時までの深夜に働かせた場合には、
労働基準法第37条第3項が適用されます。
したがって、深夜労働の時間に応じた
2割5分以上の割増賃金を支払わなければなりません。
【休憩時間】
みなし労働時間が6時間を超え8時間までであれば45分以上、
8時間を超える場合には1時間以上の休憩時間を与えなければなりません。
ただし、対象従業員に所定の休憩時間を支持することは
労働時間の配分についての指示となりますので、
可能な限り所定の休憩時間を与え、
取得できなければ別の時間帯に取得させる必要があります。
【その他の労使協定事項】
みなし労働時間制の対象従業員に対しては、
「出退勤時刻の管理」や「裁量労働制適用の中止」の事項も労使協定事項となります。
それは以下の観点から要請されるものです。
1 労働時間の状況に応じた健康・福祉確保措置を講ずる必要がある
2 休日労働・深夜労働について法定基準の定めがある
3 健康・福祉確保措置または苦情処理措置と合わせて
事後措置も設けることが望ましい
【就業規則】
常時10人以上の従業員を使用する事業場において
裁量労働制を適用する場合においては、
就業規則における始業・終業時刻の例外であることなどにより、
就業規則においても、始業・終業時刻、休日労働、
深夜労働、休憩時間などについて定めた上で、
従業員に周知して所轄労働基準監督署長に届け出る必要があります。
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