給与の振込先を一人1口座に限定できるか?
中小・ベンチャー企業の大半では、
従業員が指定する1ヶ所の振込先に給与を振り込んでいます。
ところが、従業員の中には
給与のうち10万円はA口座に振り込み、
残額をB口座に振り込んでほしいなどと希望する人もいます。
会社としては、こうした要望に応えていくことは、
振込手数料もかかりますし、労力もかかるので、
できれば一人1口座に限定したいと考えるケースが多いのではないでしょうか?
さて、このように、給与の振込先を一人1口座に限定することは
法的に問題ないのでしょうか。
結論から申し上げると、原則として問題はありません。
平成10年9月10日基発530号により、
次の通達が出ています。
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取扱金融機関及び取扱証券会社は、
金融機関または証券会社の所在状況等からして
1行、1社に限定せず、複数とする等
労働者の便宜に十分配慮して定めること
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これは、一人の従業員に対して、
複数の口座に分けて振り込むことを配慮するという意味ではなく、
会社が振込先を「必ず○○銀行の口座に振り込む」等と定めるのではなく、
従業員にとって複数の金融機関等の中から
振込先銀行を選べるように配慮してください、という意味です。
この程度の便宜を図ることは求められていますが、
複数の口座に分けて振り込めるようにしなさい、
とまでは求められておりません。
従って、給与の振込先を一人1口座に限定することは
特に問題ないという結論になります。
なお、賃金の口座振込については、
次の要件をすべて満たすことが求められています。
1 労働者の同意を得ること
2 労働者が指定する本人名義の口座に振り込むこと
(労働基準法施行規則第7条の2)
これらの要件に加え、
振り込まれた賃金の全額が
所定支払日に払い出せるようにしてください、等と
行政指導をしています。
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