解雇予告と同時に休業命令。これで人件費削減!?
時解雇したい従業員がいるとします。
即時解雇の場合は、解雇予告手当として、
平均賃金の30日分以上を支払う義務が生じます。
1日当たりの平均賃金が仮に1万円の人の場合、
解雇予告手当として30万円支払うことになります。
「なんでこんなヤツに30万円も支払わなきゃいけないの?」と
ウニャウニャ考え始めたA社長は
こんなことを思いつきました。
1 即時解雇をするのではなく、
30日後に解雇しますという解雇予告をする。
2 でも、会社には来てほしくないので、
解雇予告と同時に、休業命令を出す。
3 会社都合の場合は休業手当として、
平均賃金の6割を支給することになっている。
しかも、休日については支払わなくてよいので、
実質22日程度の営業日数に対して支払えば済む。
(平均賃金1万円×6割×22日=132,000円)
なんと、この作戦を実行すると、
30万円が13万2千円に支払額がグッと減ります。
限りなく労働基準法の脱法行為に近いような感じがしますが、
こんなことは法律上、許されているのでしょうか?
結論から申し上げると、労働基準法上、問題ありません。
実は、上記のような問いに対する通達がありまして、
そこには次のように書いてあります。
「本件については30日前に予告がなされている限り、
その労働契約は予告期間の満了によって
終了するものである。」
(昭和24年12月27日 基収1224号)
ま、あまりお勧めしませんけどね(理由は後述)。
なお、休業ですと従業員としては
平均賃金の6割しかもらえませんので、
通常の賃金額をもらいたいがために、
「有給休暇を取りたい」と申請してくる可能性があります。
これに対しても、有給休暇を認めなくて結構です。
有給休暇は労働義務のある日に対して、
労働を免除するものです。
休業日は、労働義務がありません。
労働義務のない日に有給休暇を使うことはできないのです。
なお、この作戦を遂行する上で
一点気をつけていただきたいことがあります。
就業規則もしくは賃金規程等に
会社都合による休業を命じる場合は、
6割の休業手当を支払う旨が明記しておくことが要件です。
この規定がないと、
民法536条2項の危険負担が優先され、
6割でなく100%の賃金を支払うことになります。
・・・以上が法律上のお話。
ただ、このやり方はおススめできません。
やはり、即日解雇で解雇予告手当30日分を
支払うことをおススメします。
本来は即時解雇したいくらいの人なのですから、
経営者にしてみたら、従業員が相当腹立たしいことを
しでかしたのだと思います。
おそらく、この時点では、従業員との人間関係も
決裂している可能性が高いです。
そんな人に解雇予告手当を支払うというのも
「盗人に追い銭」のような気持ちになるというのも、
十分理解できます。
それでも、経営者たるもの、
「忍」の一字で耐え忍んだ方がいいです。
この世の中には因果の法則があります。
善因善果、悪因悪果と申しまして、
よい原因を作れば、その良さに見合った結果が生まれ、
悪い原因を作れば、その悪さに見合った結果が生まれます。
相手を苦しめるという行為をすれば、
それは、悪因悪果。
後日、確実に自分にはね返ってきます。
経営者の場合、自分=自社ですから、
「悪果」が自社に起こります。
自社が経営者一人の会社ならまだいいですが、
従業員を雇用している場合、
「悪果」の影響が従業員にまで及んでしまいます。
相手のためというよりも、
自分や他の従業員のために、
ぜひ、耐えていただきたいです。
また、現実的な問題として、
解雇というのは、ただでさえ、
従業員とトラブルになりやすいです。
トラブルになれば、労力もかかりますし、
時間もかかります。
最後は金銭解決になることも多く、
その時には数か月分の給与を
退職金や和解金の形で支払うケースが大半です。
そんなことになるのなら、
相手をあまり追い込まず、
会社と対決姿勢になってしまう事態を
極力避けた方が無難であると
私は思います。
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