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中野人事法務事務所中野 泰(なかの やすし)

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退職勧奨を拒否した社員を畑違いの子会社に出向させることは有効か?(リコーの例)

退職勧奨を拒んだことを理由にして、
今までのキャリアと全く異なる職種につかせる出向を
命じることは許されるのでしょうか。

11月12日、株式会社リコーの社員2名が
出向命令の無効と損害賠償を求めていた訴訟で、
東京地裁は損害賠償の請求は棄却したものの、
出向命令は無効とする判決を言い渡しました。

【事案の経緯】


リコーは2011年5月、3年間で
グループ社員1万人を削減するという
リストラ計画を発表。
その後、上司から3回にわたって退職勧奨を受けました。

退職勧奨は「退職してはどうか?」という会社からの提案。
この提案に合意するかどうかは従業員の自由です。

複数回に渡る退職勧奨を拒否すると、
9月になて子会社の物流会社への出向を命じられました。

判決後、厚生労働省で会見した原告の50代の男性によると、
この男性は入社から26年間に渡り、
複合機の研究開発を担当していました。
多くの特許に関わり、社内表彰を受けたこともあるそうです。

それが、出向先では商品の箱詰めや検品等を行う肉体労働。
空調もなく、一日立ったままの作業です。

男性にとっては意に反した仕事であり、
見せしめなのだと感じたそうです。

そこで、本来のキャリアを生かせる仕事に戻してほしいと、
訴訟を起こしたという経緯です。

この事案に対する判決の要旨は次の通りです。

【出向命令が人事権の乱用に当たるかどうかの判断基準】

★ 業務上の必要性や人選の合理性、出向者に与える
  不利益などを考え合わせて判断すべきだ

【判断基準をリコーの事例に当てはめると?】

1 業務上の必要性


★ 同社が人件費抑制のため出向を命じたのは業務上必要だったと認定。

2 人選の合理性

★ 整理対象の人選を約1か月で終えたことなどから、
  人選作業の慎重さや緻密さに欠けていた。
★ 出向命令は退職勧奨を断った2人が
  自主退職に踏み切ることを期待したもので、
  人選は不合理である。

3 出向者に与える不利益

★ 子会社では立ち仕事や単純作業が中心で、
  それまで一貫してデスクワークに従事してきた
  2人のキャリアに配慮した異動とは言い難い。

4 結論

★ 今回の出向命令については、精神的にも肉体的にも負担が大きく
  人事権の乱用である。

なお、損害賠償請求については、棄却されました。
主な理由は下記の通りです。

★ 人員配置の見直しなどで人件費の抑制を図ろうとすることは
  一定の合理性がある。
★ 退職勧奨については社会通念上相当な範囲であった。

リコーは判決について「出向の有効性については
当社の主張が十分にご理解いただけない
結果になった点は非常に残念」とし、
控訴したことを明らかにしました。

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